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テンポラリー通信

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2015年 08月 06日

ネガ・ポジ・デジー窓(17)

13年前の英国の美術家ロジャーアックリング滞在制作時
の記録写真を我々の出版したドキュメントで見て、ロンドン
でロジャーの追悼本を編集しているエマさんが気に入った
ようで使わして欲しいという打診があった。
その時の資料ファイルに21枚のポジフィルムが保存され
ている。
ネガよりも長時間保存に耐え画質も良いというその当時
の理由もあって私の所の記録はみんなポジで記録されて
いる。
こちらで出したロジャーのドキュメント集に載せたのはその
一部で他にもまだ20枚近くあると聞いて、ポジをデータ化し
て送ってくれないか、と要請があった。
その上で新たに選びたいという。
パソコンはメールとこのブログを打ち込む以外不慣れなので
、ましてポジフイルムをデーターに変換など出来そうも無い。
印刷に使うならどうせ本物のポジフイルムを直接送った方が良
いだろうと思い、そのように連絡する。

写真は登山家の中川潤氏が撮ったものである。
山という大自然といつも接している彼は、作家達に頗る評判が
良くて、その理由は撮影時の周囲との一体感にある。
一言で言えば周囲に溶け込んで、制作の邪魔にならないからだ。
自然児でもある彼はそんな特性を活かして、望来の断崖の連なる
海岸で流木を拾い、そこに集光レンズで彫刻してゆくロジャーの
普段見られない姿を記録してくれたのだ。
夫婦二人と海岸に迫る断崖絶壁。
そして制作に励むロジャーの姿。
光と海と風に包まれ、それ以外は何もない至福の制作場で、山と共
に鍛えられた気配を消す術を熟知している山男の撮影はこの時も
作家の信頼を深く得ていたのだと思う。
そうした中川氏の労作をデジタルデータなどでなく、ずばり本物を
英国ロンドンまで送る事にした。
あて先を聞くと、最後にUNITED KINGDOMと記されておる。
知らなかった。
英国は正式にはそう呼ぶのか。
極東の島国の、さらに小さな島の片隅の記録が海を渡る。

英国へ送る運送費にも事欠くような貧乏画廊の気持ちだけは昂ぶる
暑い・熱い日だった。

ネガでもデジでもなく、ポジな日だったね・・。

*村上仁美・高臣大介展ー9月初旬。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-08-06 11:54 | Comments(0)


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