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テンポラリー通信

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2015年 06月 04日

時の流れー屋根(8)

方斎さんが案内状を出したが、岡部昌生宛の分が住所不明で
戻ってきていた。
旧表記のようである。
それ程二人の間に時間が経っていたのだ。
そこへひょっこりと本人が顔を出した。
早速戻っていた案内状を手渡す。
嬉しそうに岡部氏は郵便屋さんへの文句を言いながら葉書
を大事そうに鞄にしまった。
古い表記だけど間違ってはいない、届く時もある、配達人
の質だな、と言いながら、嬉しそうだった。

古豪の再会。
ふたりは今年1月の吉増剛造展のオープニングでも会って
たが、方斎の個展という事では随分久し振りだろう。
それだけ佐佐木方斎が復活したという証である。
岡部氏もその事が嬉しかったに相違ない。
お酒が入り会話が熱を増す。
面白かったのは、岡部氏がぽつりと漏らしたひと言。
昔は方斎の方が尖っていたけれど、今は俺の方がそうかなあ。
同じ尖りでもふたりの出方が違う。
一見穏やかな切り口で話すが、岡部氏はその背後に強烈な自己
主張がある。
方斎は時に最初から尖り放しで突っ込んでくるタイプだ。
だからこのふたりは陰と陽のように本質的に逆な出方をする。
それが今、今回不思議な接点を見せて出会っている。
岡部氏の内面の尖りが情念的に表に顕在化し、方斎の表の尖りが
内面化し、今回の「Primary Painting」となって顕在化している。
それがふたりの対話の内にも現れていた。
古豪ふたりの再会は、スルメのように噛み締める味な時間だった。

近くの中華屋で食事と酒を飲み、私は所要で地下鉄駅傍のコンビニ
に寄る為ふたりと別れた。
用件を言い、お先にどうぞと言った筈だ。
翌日画廊で方斎氏が、ふたりで1時間も待っていたぞ!と言う。
え!と「こっちは吃驚する。
ふたりと別れて用事のあるコンビニに近い地下鉄駅入口から
私は帰ったのだ。
ホームには誰も居らずもうふたりも帰ったものと思っていた。
そこで方斎に聞いた。
もし俺たちだけでこうだったら、君はさっさと帰っただろう・・・。
うん、そうだな・・・
岡部氏の情念的尖鋭さと佐佐木氏の尖鋭さの相違の一端が見えた
ようで可笑しかった。

もっとも、迷惑かけたのは私ですけど・・・、ね。

*佐佐木方斎展「Primary Painting」-6月2日(火)
 -14日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-06-04 12:57 | Comments(0)


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