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テンポラリー通信

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2015年 05月 15日

心・交差点ー斜道(29)

色んな人たちから、暖かい誕生日のメツセージを頂く。
こんな老骨に有難く感謝する。
山田航さんが来て道新連載の最新モノローグ紀行を持参
してくれる。
今回は月形樺戸監獄博物館と北斬寺訪問のエッセイとそこ
で読んだ歌である。

 罪が傷のように癒えればいいのにな剥がすのが早すぎた
 かさぶた

このお寺に寺宝として保存されている熊坂長庵の弁天図。
長庵は冤罪の疑いがあつた人らしい。
ひたすら獄中で絵を描いていたという。
その長庵を悼み歌った一首。
前後の文脈を繋ぐ<な>の一文字が過去と今を繋ぐ、きらり
とした秀作と思える。
時を結ぶ裏打ちのような<な>だ。

鈴木余位さんから送られてきた今月末まで開催中の横浜美術館
石田尚志展トークショウのヴィデオを、山田さんと見る。
吉増剛造さんと石田さんにもうひとりのゲストが加わり
石田・吉増の映像も交えたトークだ。
ふたりの長い交渉史が今に繋がる稀有な対談の感がある。
出会いから始まり、吉増さんの進行中の傑作大草稿「怪物君」
と、石田さんの映像作品への向き合い方。
その中でフイルムの裏から表への視座が、ふたりの共通視座と
して何度も語られた。
内臓言語だなあ、と興味深く見入っていた。
その時電話が鳴り、出るとなんと石田さんからではないか・・。
一瞬画面の奥裏から生の声が届いている感じがした。
驚いてその事を話すと、石田さんも一驚していた。
4,5日前私自身の裏の声のように、恥を忍んでお頼みした
事の返事だった。
何故石田さんに頼んだのか、正確な理由はない。
ふっとその時頭に浮かんだのである。

何が裏で、何が表か分からない。
病と闘い日々の生活さえやっとな私と、この日の石田さん
やTさんのように、また拙い人生の誕生日に暖かいメッセージ
を頂く私とは、どちらが表で裏なのか。
裏が表になったり、表が裏になったりする。
山田航さんの一首に倣えば、

 表が傷のように癒えればいいのにな剥がすのが早すぎた裏

その後も類稀な石田ー吉増のトーク映像を見ながら、そんな事
を思っていた。
石田さん、Tさん、そして暖かいメッセージを送って下さった
皆さん、ありがとう。

*及川恒平・山田航ライブ「二本のポプラをめぐる二つのうた」
 5月16日(土)午後5時~予約2500円。
*佐佐木方斎展「Primary Painting」
 6月2日(火)-14日(日)am11時ーpm7時月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel.fax011-737-5503、

by kakiten | 2015-05-15 14:17 | Comments(0)


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