山と海に近いふたつの護岸という回路に思いを寄せていたら、
土石流と高波の台風の映像が飛び込んでくる。
何十年に一度という大型の台風が襲来したのだ。
遠い南の海に発生した台風は、梅雨前線を押し上げ今晩
あたりから北海道にも雨風を及ぼすという、
地球という星に生きる生物を透明な綿のように包んでいる
水と空気という有機体。
その柔らかで透明な存在が凝縮して野生の牙を剥く。
荒ぶる自然の前に人はひたすら耐え忍んで通過を待つので
ある。
折しも「都市と自然」をテーマに札幌国際芸術祭が始まる。
時期も重なって、その主題の真価も問われているのだ。
今年は住宅街への熊の出没も多発し、自然という野生が
本性を顕している。
都市化という自然破壊が進行すると同時に、自然という野生
がどこかで人間社会へ逆襲する反動が何倍返しかで用意され
ているかに思える。
空を飛ぶ金斗雲や力を増幅する如意棒を得た孫悟空のように
人間という進化した猿の驕りは、所詮お釈迦様という自然の
掌の中である事を今感じなければいけない時なのかもしれな
い。
山の斜面に添って伸びる石段という護岸と、川の蛇行に沿っ
て延びる岡崎式単礁ブロックという護岸の自然への敬意ある
回路。
そこに、すぐ前の時代まで在した先人の自然への畏怖と敬愛
の形象を今も真摯に存在するものとして見るのである。
都市に特化した500m地下通路や箱空間には、この畏怖と
敬愛の祈りの回路が無いのだ。
*谷口顕一郎展ー7月19日(土)-27日(日)am11時
-pm7時:月曜定休。
*斉藤周展「日々の形状」-8月1日(金)ー10日(日)
*小谷俊太郎展ー8月26日ー9月7日
*秋元さなえ展ー10月28日ー11月8日
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fac011-737-5503、