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テンポラリー通信

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2014年 05月 02日

岩内と夕張ー陽炎・皐月(2)

岩内の木田金次郎美術館のO氏が来る。
久し振りの再会で嬉しかった。
この時頂いた資料の中に「木田金次郎第一回個展の
頃」の図録があった。
木田が60歳にして1953年初めて開いた個展の
記録展である。
場所は当時の丸井今井百貨店。
さらにこの個展の為に動いたのが丸井と同じ南一条
通りにあったとされる画材専門店銀嶺荘主人今井卯
八氏、そして当時の北海道銀行頭取の島本融氏だ。
札幌のシティゾーンにあった地元銀行・専門店・百
貨店が木田を強力にバックアップしたのだ。
まだ公的な美術館もなく、大きな会場も無い時代に
民間の地元の力を結集させてまだ無名に近かった木田
金次郎の大展覧会を成功させたのだ。
この磁場となったのが、大通りから南側の300乃至
500m平方界隈に集中した地元である。
昭和28年のこの時代まで確かにこの地域は市民文化
の受け皿としての風土を持ち続けていた証でもあると
思える。

もうひとつ頂いた資料の中で目を惹いたものは、9月
に予定されている夕張市美術館コレクシヨン展である。
すでに財政破綻で閉館となった夕張市美術館の遺された
収蔵品を岩内の木田金次郎美術館で公開するものだ。
エネルギー資源として近代を支えてきた石炭産業の夕張。
現在のエネルギー源としてある電力基地泊原子力発電所
に近い岩内。
このふたつの揺れる都市を結んで、今は建物を喪った
炭鉱最盛時の美術品が移動し展示される。
その事がエネルギー資源の大口消費地である札幌圏の
底辺を移動して行われるようで非常に興味を感じたのだ。
岩内はかって夕張よりも早くに炭鉱があった処でもあり、
同時に漁業の供給基地として岩内場所とも呼ばれた産地
である。
現在は泊原発にも程近く、現代のエネルギー産業の最前線
にもある訳だ。
この岩内と夕張が遺された美術作品を通して連携する、
その関係性が札幌都市圏への反措定として面白いと思った
のだ。
新旧ふたつのエネルギー基地を喪われた美術館の作品が
漂うのである。
このふたつの都市を結んで札幌という消費都市はどんな姿
を現すのか。
喪われた札幌シティを想起しつつ見てみたいと思う。

*八木保次・伸子追悼展ー5月11日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2014-05-02 18:19 | Comments(0)


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