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テンポラリー通信

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2014年 04月 15日

風ゆるむー光陰・卯月(10)

今年初めて自転車に乗る。
少しふらつく。
眼の位置が違う。
ハンドルが左右に揺れる。
微かな登りに息が切れる。
風が柔らかい。
風景が肺に吸い込まれる。
次第に身体が慣れてくる。
ああ、この感覚だ。
五感が外界と呼応する心地良い緊張関係。

削りたての鉛筆の黒い芯のような先の尖った靴。
BやHの太い足や細い足が噛み付くような勢いで
飛ばす早足歩行の街の半年。
自転車でも同じような走り方をする人はいるけれど、
周囲に広がる森や遠くの山並み、風が街とは違う。
根付き生息する精が満ちているからだ。
木々も草も風も地に根を下ろしてゆるんでいる。
移動が主軸ではない、その場に垂直な生の揺らぎが
通過する私の移動を抱擁している。
緩やかに蛇行する移動なのだ。
街はショートカットの直線が支配して、この有機的な
歩行の抱擁は消えている。

ある時代まで街がすべてそうであった訳ではない。
移動し移住し、そこに固有の根を下ろして小さな移民が
その地に文化を育ててきた。
札幌で言えば、薄野には薄野の、駅前通りには駅前通り
の、円山には円山の、それぞれの地域の小さな固有の根
を下ろした移民の文化があったのだ。
その地域の根の文化が根こそ物流の移動軸に剥離されて
ある。
<住>の根と<民>の根が喪われて、<移動>の<動>
だけが尖鋭化しているのだ。

速度を上げ効率を追求する移動の加速化と地に根を下ろす
移住と移民の浸透する文化の速度は、都市と自然の永遠の
対峙する命題でもあるだろう。
どこで拮抗し、どこで折り合うか。
その問題は今も昔も変わらぬ永遠のテーマだ。

*八木保次・伸子追悼展ー4月22日(火)-5月11日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリーースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2014-04-15 14:01 | Comments(0)


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