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テンポラリー通信

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2013年 11月 30日

凍る路面ー風曼陀羅・霜月(19)

急に凍った路面に気をつけながら少し遅れて画廊に着く。
先に入り口にたっている人がいた。
網走の佐々木恒雄さんだ。
1年ぶりかしら、久しぶりの訪問である。
今年の漁も明け、個展の打ち合わせに来たという。
年明け1月に2年ぶりの個展となる。
オホーツクの海で厳しい自然と向き合いながら感じた
何かを今回の個展に表現したいという。
海という圧倒的な自然の中、さらには国境の海で漁業と
いう生活行為を続けながら、彼は何を感じ何を絵画とし
て表わすのだろうか。
都市生活者に希薄な自然との直接対峙そして国境の海と
いう国家の対峙という日々の現場から、都市生活者が日
常見失っている現実を見せてくれるような気がする。
佐々木さんのように漁師を営みながら生活している人間
には、自然の脅威も国境の脅威も日常である。
都市生活者の自然や遠い国境の比ではない。
国家と自然はともに恐ろしいまでの敵として襲い掛かって
くる存在であるからだ。
3・11のような大災害に遭わなければ、本当の自然の
脅威からは遠い存在が都市生活者の日常なのだ。
我々は普段緩やかに飼育された自然の中で暮らしている。
真の自然と国家の境目を生きている訳ではない。

如何にエッジの感覚を保持出来得るか。
それぞれの生きる現場においてその感覚が澄んで冴えて
保てるか。
私は私の生きているこの場で、オホーツクの海とはまた
違うリアリテイを保ち得るか。
エルムゾーンの片隅で思うのである。
そんな思いから、佐々木さんには岡崎文吉の治水のヴィ
デオを見せた。
川の水と闘った治水学者の一生である。
オホーツクの海の水とはまた違うもう一つの水の生を
佐々木さんはどう感じただろうか。
何年か前共に歩いたエルムゾーンの記憶をたどりながら、
岡崎文吉の原点ともなった北大構内のエルムの大木の映像
に、大きく頷く佐々木さんがいた。
その時少しだけだが確実に彼がここを訪ねて来てくれた友
情を感じ、オホーツクと石狩の海がエッジとして触れてい
る気がしたのだ。


*吉田切羽写真展「on the road」-12月1日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*吉増剛造展「ノート君~神窓へ」-12月10日ー1月5日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-11-30 12:48 | Comments(0)


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