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テンポラリー通信

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2013年 11月 06日

メニューと産地ー風曼陀羅・霜月(5)

ホテルやデパートの高級レストランの食材表記偽装の報道
が相次いで行われている。
食材の産地が、有名ブランドに偽装されていた疑いである。
豪華な空間で有名ブランドの食材を高価な金額を払い食する。
そんな有名ブランドのメニューに騙されていたとすれば、それ
は料理を出す方の責任も勿論あるけれど有名ブランドに弱
い食する方のにも責任の一端はあると思える。
この時両方に共通しているのは、どちらもが産地にいないと
いう事である。
もしそこがその食材の産地であるならば、偽装も騙される事
もどちらもあり得ない筈なのだ。
すべては産地から遠い消費地での虚栄に満ちた物流の現場で
の出来事なのだ。

札幌国際芸術祭の多彩なイヴェントメニューを新聞で見なが
ら、同時に報道されていたこのニュースを思い出していた。
頭の良い人たちが外からいろんなメニューを提案するのは、
それはそれで意味ある事かもしれない。
産炭地も水源地も自然も近代の歴史的建造物も音楽も多方面
から、札幌・北海道という地域性を考えるのは大事な事かも
しれない。
しかしながら、文化もまた産地から生まれるものである。
産地である事を抜きにして、メニューだけを揃えてもそれは
消費地・物流の中心にしかなりえない。
豪華な調度品で装われた高級ホテルや有名デパートのレスト
ランと変わらぬ存在となるのだ。
産地とは言い換えれば、場という事である。
それぞれのメニューの産地が様々であって、ここ固有の産地
の場が私には見えてこないのだ。
例えば何故産炭地が会場のひとつとなるのか。

同時に市民参加のアートを謳っているけれど、産地が文化の
基本であるならば市民は参加ではなく主体であるのが本筋
である。
そこで問題は札幌という場が、果たして産地としてあるのか、
ないのかという根本的な問いである。
北海道の総人口の半分近い人口数を保ち、大消費都市として
また道庁を戴く道都として政治経済の中心都市として機能する
位置からは、産地としての地に根付いたものは不鮮明であるのだ。
高級ホテルや高級デパートと同じような器の立派さが際立つよう
な大都市構造の消費中枢が、その実体ではないのか。

少なくともはっきりといえる事は、伊勢海老の産地で偽の伊勢海老
がおおぴらに提供される事は有得ないという事である。
産地から遠く離れた場でこそ、そうした偽装がまかり通るのだ。
今必要なものは、いかに真に自らの大地に鍬を降ろして耕している
かを問う地道な現場・産地を問う事である。

*吉田切羽写真展「on the road」-11月19日(火)-
 12月1日(日)
*吉増剛造展ー12月10日(火)-1月5日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503



by kakiten | 2013-11-06 14:26 | Comments(0)


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