先日の休廊日、所用で自転車で出かけた。
前の店舗のあった通り近く信号待ちの間、街路樹のナナカマド
が赤く色づいているのに気づく。
ぼんやりと、秋だなあと梢を眺めていた。
その時急に横に立っていた中年の女性に腕を摑まれ、名前を呼
ばれて声をかけられる。
どこか見覚えのある人だったが、思い出せない。
じっと顔を見ていたら、目が潤んでいる。
どうして?と問うとも無く問うと、知ってる人に会って急に・・
と言う。
その内信号が変わり約束の時間もあったので、じゃあまた・・
と別れた。
7年前に去った街角近くで出会ったあの人は誰だったのか、今も
思い出せない。
ただひどく懐かしんで、思いがけず会って感情が昂ぶって涙を浮か
べていた事は間違いない。
きっと遠く近くからある時代を見ていてくれたお客さんのひとりだ
ったのだろう。
ナナカマドの実が赤くなるように時がなんらかの思い出を濃くして
横に立った偶然の時間を、一瞬垂直な感情の急流に変えていたの
かもしれない。
今朝も晴れて青空に赤く生るナナカマドの実を見上げながら、ふっ
とこの日の事を思い出していた。
少しは人に惜しまれながら、彼の地を生きてきたんだなあと感じて
いる自分がいた。
どこかで人は見ている。
目の前に来て今は何も言わなくとも、遠く感じていてくれる。
そんな暖かな小さな勇気を戴いたような気持ちがする。
ありがとう。
*収蔵品展「記憶と現在」-9月15日(日)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503