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テンポラリー通信

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2013年 06月 20日

母船のようにー光・水無月(15)

少し落ち込んでいた。
夕方人の気配がして出てみると、佐佐木方斎だった。
展示が気になると見えて珍しく間をおかず顔を出す。
新たに描いている「自由群」の話をする。
久しぶりにキャンバスに向かうと、絵の具が乾くのが待ち
きれなくて新たに描き足す。
すると絵の具が混じり色彩が濁って失敗したと言う。
新たな挑戦が始まっているようだ。

杉山留美子さんの亡くなった事を告げると、一瞬驚いて
自然と思い出話になる。
何点か彼女の作品を持っているという。
方斎コレクシヨン展もその内見たいと思う。
作品とは不思議なもので、その持ち主の磁力に集まってくる。
作品は作家の手を離れて、また別の光を放つものとなる。
今展示中の一原有徳さんと佐佐木方斎の作品もそうである。
個展の時に見えたのとは違う角度で作品が響き合っている。

瀧口修造の小樽の話になり、かって方斎が小樽の港で企画
した野外展の話になった。
その時8mmで映像を撮ったという。
それで昨年の吉増剛造展で流した多摩美の鈴木余位さんの
撮った8ミリ映像のDVDを見せる。
会期中ずっと流れていた映像である。
冬の石狩河口の猛烈な風の音が響く。
その時電話が鳴る。
なんと吉増さんからの電話である。
小樽・瀧口展に展示中の大草稿の塊を展示終了後こちらに
送るよう手配したと言う。
今後年末の吉増展まで母船のように、常時ここから発進する
草稿基地にしたいという。
札幌の「ZO」展の後7月末に東京・日本文学館に展示し、
その後再びここへ戻す。
すでに草稿は総数400葉となり、小樽に今展示中の369葉
からさらに今手元に書きつつある30葉は今月末の英国の詩祭
に持って行くと言う。
この大隕石のように進化しつつある大草稿の塊を、今後母港の
ように受け止め保管し発進させねばならない。
こりゃ大変だ。
毎年年末の連続個展に加えて、あの怪物のような大草稿の塊り
を増え続けてゆくまま受け止め続けなっければならない。
石狩河口の風の音が映像とともにビュービューと響く中、この
不意なる電話はさらに続いたのだった。

K氏のスペースで週末から予定されている札幌の瀧口周造を
主題とする「ZO」展にこの大草稿の塊りは来月展示される
予定で、場合によってはその後そのままテンポラリーへ移さ
れ展示続行という事になる。
ぐるんぐるんとこの隕石のような草稿の塊りは増殖しながら
とにもかくにも年末までさらなる増殖を重ねて巨大な草稿の
火の玉となって駆け巡る事となる。
こりゃ、大変だ。

*「記憶と現在」展ー6月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-06-20 13:07 | Comments(0)


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