人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2013年 05月 18日

微風とともにー明暗・皐月(13)

春風とともに珍しい人が来た。
打楽器奏者の太田ヒロさんである。
今展示中の故八木さん宅に程近い山中に住む。
円山時代最後の展示ガラスの高臣大介展で名演奏を
披露してくれた。
また現在の場所で最初の高臣大介展でも同様に演奏を
披露してくれたのだが、その後体調を崩して顔を見せ
る機会がなかったのだ。
その太田ヒロさんがひょっこりとワイン2本持って
顔を出す。
体調は今だ本調子ではないようだが、いつもの人懐こ
い笑顔を見せて元気そうである。
近所だった八木保次さんの思い出話やこれも亡くなった
翻訳家の石田喜彦さんや詩人の忠海光朔さんの話やらと
今は故人となった人の話が尽きなかった。
太田ヒロさんは古い鉄道のレールやら金属製のものを土
に埋めて錆らせ、それを取り出して打楽器として使う独特
の奏法をする人である。
この楽器自体が美術作品のようにもなって、演奏と楽器
の両方を前のスペースで見せた事がある。
春の陽気と八木さんの追悼展示に誘われたのか、数年
ぶりの珍客の訪問は懐かしい話の連続だった。
山上の八木さん宅はまだそのまま残っていて、今もひょ
っこりと長身の八木保次さんが家の前に現れそうだと言う。
追悼が追悼を呼び、多くの死者が訪れる。
太田ヒロさんが帰った後、ムラギシの同級生だった今田朋美
さんが見え、同年齢の山田航さんが見え、今田さんやムラギ
シと同じ高校出身の有山睦さんが見えて今度はムラギシを偲
ぶ事で話が尽きなかった。
八木さんたちは遺した絵画で人と繋がり、ムラギシも遺した
楽曲でこうして人と繋がっている。
有山さんも山田さんも生前のムラギシと面識が無いのだが、
彼の遺した楽曲を通して深い親愛の気持ちを抱いている。
それがこうして今未知の3人を結んでいる。

春らしい暖かな陽気に誘われてふっと訪ねてきたのは、生き
ている人だけではないのかもしれない。
死者もまた、ふっと訪れてきているような・・・春である。

*八木保次・伸子追悼展ー5月26日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-05-18 12:48 | Comments(0)


<< 小樽・瀧口修造展始まるー明暗・...      晴れた!-明暗・皐月(12) >>