人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2013年 05月 07日

冬の遺書ー明暗・皐月(3)

以前から約束していた昨日の月曜日、友人を不動の滝まで
案内した。
あいにくの天気で、川上流の道は雪解けと雨で泥濘の道
だった。
いつも歩く川沿いの土の道をやめ、板敷きの遊歩道を進む。
仮設の平らな道とすぐ傍らを流れる増水した急流の音が
ふっと不思議な感覚を与えた。
友人と市街地の見えない川の跡を辿り、そこから原始林の裾
に入って雪解け水と小雨の降る泥濘の道を抜け、仮設の板敷
きの遊歩道を歩き足元の流水を見て感じていたのだ。
平らな板敷きの仮設の道は、深い森と増水した川の側を廻っ
ている。
都市の中の埋め立てられた暗渠の川の上を歩いてきた後に、
今度はその逆の自然の中に敷かれた仮設道を歩いている。
この仮設が都市である。
ふっとそんな風に理屈抜きに実感していた。
仮設が常態化し、風景から森も川も消えた舗道を思ったのだ。
小雨は降り止まず、川は雪解け水に雨を加えてゴウーゴウー
と音を立てて流れている。
いつも歩く土の道は泥と水溜りに埋もれていたから、止む無く
避けて歩いた板敷きの道。
否応無く耳に目に肌に触れる悪天候の森と川の空気と足裏のス
ムースな板敷きがもつ違和感。
板敷きがアスファルトであり森も川も風景から消えてしまえば、
そこは都市である。

かって自然と人間社会の間には、粘膜のような中間地帯・緩衝
ゾーンがあったと思う。
それが滝の傍の不動明王を祀った祠であったり、時に庭の一本の
樹でもあったりした。
道の奥、家の傍らに愛樹・愛像がさり気無く境の徴として在った。
そこは境という世界であり、自然と人間との回路空間でもある。
スムースに移動する為の仮設の道には、この界(さかい)という
回路空間は薄くなる。
希薄となった回路は通路となり、出口と入り口が直結して遮断が
進む。

”ペーブメント”が道を構成して、有機的な界(さかい)空間
が消える。

久しぶりに青空が広がる。
でも今日も寒い風の日。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-05-07 14:10 | Comments(0)


<< ロングインタヴュー明暗・皐月(4)      川の底ー明暗・皐月(2) >>