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テンポラリー通信

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2013年 02月 10日

雪道速歩ー燃える如月(6)

滑る雪道を速度を上げて背後から足音が迫る。
これは嫌だなあ。
男女・年齢に関わらず、急に背後から迫ってくる。
足下の不安定な細い雪道である。
地下鉄駅近くの道では特にそういう人がいる。
気が急くのだろうが、後から追い立てられるようで
脅迫的に感じるのだ。
こういう人は地下鉄に乗ると、大体入り口近くに陣取り
目的地到着と同時に飛び出して、エスカレーターの上
を走り出す。
乗り換えの場合でも、電車の到着の有無に関わらず
一散に小走りである。
世間に乗り遅れるかのように、せかせかと早足だ。
こういう場面に会うといつも「モモ」を思い出す。
ミヒャエル・エンデ作「モモ」の灰色の服を着た男に時間
を抜かれたように、時間貯蓄銀行に貢いでいる人たちを
思い出すのである。
街の駅だけではなく、西方の円山公園駅ですらそうである。
郊外エリアですら街の早足が主流となりつつあるのは、
住宅地に同じ人種が増えているからだろう。
住居空間にも競争原理の事業空間が侵食している。
これは<住>パックとして高層化し、<業>のパック
としてビジネス・ショッピングビルが林立している事と相互に
関係している。
この<住>と<業>のふたつの集合パック体を連結する
ものが地下鉄であり、車のような高速交通媒体である。
その回路の中を人間も同じような速度で飼い馴らされて
早足となるリズムが生じている。
これは個のリズムではなく、物流社会構造のリズムなのだ。

滑る雪道をロボットのように、カキコキとした動きに早足で
歩く人を見ていると、路上のエスカレーターを見ているよう
で気分が良くない。

 大都会の北部には、広大な新住宅街ができあがりました。
 そこには、まるっきり見分けのつかない、おなじ形の高層
 住宅が、見わたすかぎりえんえんとつらなっています。
 ・・・・・
 人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、
 なくなってしまうのです。

      (「モモ」第二部 灰色の男たち 六章から)


*秋元さなえ展「121年前のよろこび」ー2月12日(火)-21日(木)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-02-10 14:05 | Comments(4)
Commented by 宍戸です at 2013-02-10 16:08 x
わたしもかつて札幌に来た当初は道行く人の足の早さに戸惑いました。(私は当初、歩く早さならおばぁちゃんにも抜かされていました)
今は私も急ぎ足のひとりになりつつあります。
自分で気付かなかったけれど、最近すごく時間が足りないくらいの日常を送っていますので、スピードをつい出してしまうのかなと思っています。不思議と疲れはありません。
Commented by テンポラリー at 2013-02-10 16:33 x
宍戸さん>ふっふふ・・そうですね、実は私もそうなのですよ。
韋駄天と呼ばれた程早足なのです。
でも雪の無い時は自転車なので、気付かなかったのですが
冬は地下鉄が多くその所為か他人の歩行が気になって
います。まあ昨年転倒して手首を痛めてから特にそうなった
のかもしれません。
弱くなって感じる事もありますね・・。
Commented by キュキュット at 2013-02-10 18:51 x
私の歩き方は以前、こちらの子どもに「札幌歩き」と名付けられました。田舎には合わないスピードだったようです。こちらの生活に慣れてから久しぶりに札幌に行くと、人の多さに驚き、人をよけられない自分に驚きました。札幌にいた頃は、周囲の動きを予測してノンストップで歩き続けることが楽しかったのですけれど。

モモは私も好きです。
のんびり歩けば必ず知り合いに出会う街です札幌は。
Commented by テンポラリー at 2013-02-11 17:05 x
キュキュットさま>ノンストップで・・正にそれですね。
周囲の動きを予測して・・というのもその通りですね。
それが楽しく、どこか誇らしげでさえありました。
街歩きはそうでした。
何時からか、風景と語りあう事を知って、その楽しさに
気付きました。山歩きを知ってからです。
それでも暴力的韋駄天歩きと揶揄されてましたが・・。
最近ですね、人の歩きが気になりだしたのは。
それで、「モモ」を思い出したのです。


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