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テンポラリー通信

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2012年 10月 04日

500mたまり風ー蒼月・10月(3)

地下通路の500m美術館に出店依頼がある。
会期は来年2月から4月中旬までで、締め切りは今月8日
というから随分強引な話。
普段は美術家の展示が主体の筈だが、今回は「Hokkaido 
Art Map」とかいう事で、2014年7月の坂本龍一をゲスト
デイレクターとする札幌国際芸術祭開催の為の一環という。
道内のギヤラリーやアートプロジェクトを「アートと出会える
場所」として500mに集約し紹介するという事らしい。
出店お礼は無料で広報宣伝の一環と捉えて下さい、とある。
<札幌>国際芸術祭の為というのであれば、なにも<北海道>
アートマップと範囲を広げたタイトルを使う必要はあるまい。
札幌アートマップで充分ではないのか。
札幌の画廊といっても種々様々で色んな場所に点在して
それぞれが個性的である。
それは各ギヤラリーの個性もあるが、同時に在る場所の多様
性もある。
都心のビルの中や地下にある均質性とは違い、郊外には多く
の地域性がある。
それ自体をマップ化すれば、札幌の地形と風景が都心の均一
な空気も際立ってより有機的な札幌が見えてくる筈である。
そうした札幌という場の固有な魅力をベースに出店ブースを
出先として纏めて紹介すると言うのなら少しは意義もあるが、
大風呂敷で「札幌」国際芸術祭の為に「北海道」アートマップと
名付ける感覚にある種の事大権威主義的な視座を感じるのだ。
この感覚には、固有の石狩国・十勝国・網走国といった北海道
の多様な文化状況・地形・風土といった視座が欠落している。
地域の相違も見えない視座に、札幌のそれぞれの地域の豊か
さ、違いが見える筈もない。
画廊犬養の在る場の保つ川向こうの旧豊平村中洲ゾーンと、
画廊門馬のある旧円山村養狐場の在った山沢ゾーンとは同じ
札幌でも空間が違うのである。
同様の事は細かく見ていけば、他の郊外の画廊すべてにもいえ
る事だ。
都心の高層ビルに収納されている均質化した都市空間とは違う
要素が、マップにした場合に大きく顕れるのだ。
そうした基礎となる札幌への視座すら形成できず、あたかも政治
経済の産業構造的道都発想で、北海道アートマップと上から目
線で物を見るのは、如何かと思う。
文化とは足元の土壌を耕す事が基本である。
札幌自体をよりよく知りその魅力を発見すら出来ないで、どうして
他国の人にその魅力を語れるのか。
テナント誘致じゃあるまいし、人口の多さとか都市のインフラ整備
状況とかを売り物にするだけでは、美術や文化の固有性とは無縁
の広報でしかないのだ。
「Hokkaido Art Map」という題目で、ぞろぞろ物産展のように
通路の壁に店名を宣伝・広報掲示板のように全道の画廊店が
並ぶなら、元々地下通路の宣伝看板用の棚壁という本来の姿を
顕しただけの事のような気がする。
それならそれで無料などと言わず堂々とお金を取って展示を募集
すればいい。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」-10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-10-04 12:57 | Comments(0)


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