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テンポラリー通信

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2012年 09月 28日

生活の原義ー月暈・9月(20)

<生活>をテーマに企画展を考えているという人が来た。
ただこの生活という言葉は非常に生っぽいので、それを
そのままタイトルとする事には躊躇いがあると言う。
なにか別の言葉でタイトルを考えたいという。
生活はそれぞれ個別な具体的状況があり、より本質的な
ところで、<生活>を主題としたい。
今展示中の尾道の野上裕之さんもそうだが、来年個展予
定の網走の佐々木恒雄さん、大阪で個展を終えたばかりの
藤谷康晴さん、とそれぞれの美術家の職業を考えるとその
生活はまったく個々の状況にある。
船大工に漁師に港湾労働である。
そこにどう<生活>という本質概念を設定するか。
企画の趣旨は非常によく分かるのだが、それをどう主題化して
企画展とするかは、組み立ての努力次第に懸かっている。

そこで昨日ふっと寝ながら「生活」という文字を考えていた。
どちらも分解すれば<生き生き・活き活き>という文字である。
漢和辞典で調べると、
「活」はー水が勢いよく流れる音をいった。形声文字。
「生」はー土と草木の芽生えからくる形象文字。
とある。
するとこの<生活>という文字は、土と水の大地の根源的な
要素からくる勢い良く溢れる様子を意味して出来たと考えられる。
正に<生き生き(土・草木)><活き活き(水・流れ)>と大地の
生命の顕れとして、<生活>があるのである。
私たちは生活というと、どちらかというとその正反対の暗いイメー
ジに陥り勝ちだが、本来的にはその正反対の生命のキラキラした
意味が<生活>の原義なのである。
調べて何か非常に新鮮な感じがした。
さらに<いきいき>という言葉の、土や草木と水というある意味
別要素を包含して造語されている事にも感銘を覚えた。
そういえば、<形容>という言葉もそうした反対概念を包含して
いる。
このふたつの文字は、ともに<かたち>と読むのである。
<形>もかたち、<容>もかたち。
外側の要素から規定するかたちが「形」であり、内在するもの
から規定されるかたちが、「容」である。
例えば顔のことを外からの目線で表すれば美形というが、内面
が顔に出て表現すれば容貌という表現になるだろう。
内なる要素から容(かたち)を使うには、容量という言葉が一番
分り易いのかもしれない。
漢字の文字にはこうした時として相反する要素を複合して成立
している場合が多い。
これも先人の優れた英知と思うのである。
ある意味で非常に弁証法的な<正・反・合>の世界なのだ。
<生活>という言葉が、土・草木と水のその最も勢いある様子
を顕して、<生き生き・活き活き>から生まれた言葉と知ったら
生活を主題とする企画展を考えているMさんはどう感じるの
だろうか。
社会的経済的インフラ条件の方に引っ張られている<生活>
概念が、より本質的な生命の側に根差して甦るような気がする。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」-10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-09-28 13:10 | Comments(0)


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