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テンポラリー通信

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2012年 06月 10日

吹く風のようにー命月・6月(5)

お久し振りです、一年ぶりです、と言って女の子が声をかけて来た。
急に言われても思い出せない。
段々と話していると、そういえば瀬戸くんの後輩で音楽を専攻する
南聡先生の学生だった事を思い出してきた。
南先生の所でムラギシの遺作集を読み、ここへ一度訪ねてきた子だ。
教育大の南先生は、ムラギシの音楽上の恩師でもある。
製作中の森本さんとも話し、奥でふたりにムラギシの映画「Monkeylove」
を見せる。
若い女の子特有のテンシヨンの高さそのまま、自分の事を溢れるように
喋って帰って行った。
帰りに、自作の作曲楽譜のコピーを置いていった。
きっとこの一年の彼女の成果、大事な作品なのだろう。
「空間2-状態変化 フルートとピアノのために」というタイトルがついている。
楽譜だけ見ても私にはどんな音なのか想像もつかない。
ただここを再訪するまでこの一年間、何かが溜まり何かが動いたのだ。
きっと一陣の風のように立つものがあったのだろう。
分からないままに、頂いた楽譜は大事にファイルして綴じておく。
いつの日か、これが音として耳に聞こえてくる日を楽しみにする。

その後森本さんと同じ専攻の後輩という釧路出身の子が訪れる。
ひさしぶりに同じ専攻の後輩と呼べる子が来て、森本さんは機嫌が良い。
釧路から岩見沢の教育大に入学し、今だ固い殻を保った感じの子だった
が、ひとりでここまで訪ねて来たひた向きさを感じさせる子だった。

この日来たふたりの若い人を見ていると、若さがすべて良い訳ではない
が、若い子特有の風のような来方、去り方が好ましかった。
まっすぐ感性のまま吸収し行動してゆく。
妙な値踏みをして自らの感性を隠す事をしない。
吹く風のようである。

3mを超える横幅の大作が次第にその姿を顕してきた。
森本めぐみさんの転機を感じさせる大作である。
これも海峡を渡る風のような、予兆に満ちた作品である。
風のように、波のように、作品から立つてくるものがある。


*森本めぐみ展ー6月6日(水)-17日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-06-10 12:17 | Comments(0)


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