2012年 02月 02日
2月1日、相次いでふたりのYから便りがある。 先に届いたのは、昨年末一緒にエルムゾーンを歩いた東京の 吉原洋一さんからの手紙だ。 昨年12月18日ここを初めて訪問した時の印象と翌日吉増剛造さん たちとともに歩いたエルムゾーンの印象を書き記した一文だった。 テンポラリーを探し、入り、吉増展を見た印象が瑞々しく揺れるような 文章で書かれていた。 ・・・それにしても、道がまっすぐで、曲がり角が直角な街だ、おかげで 迷うことはないのだけれど、歩いていてわくわくはしない、しなかった、 そうして、ギヤラリーを見つける、なんとなく隅っこに、なにかの縁に そっと存在しているような一軒家の空間、入口は狭いのに、入ると包ま れている感覚になる、見上げると、天井が高い、天井が高いというのは 正確ではなくて、二階の天井まで吹き抜けになっている、・・・登るとまた 視界が変わる、・・二階はぐるりと人がひとり歩けるくらいのスペースが あるだけ、あるだけなのに、恐さ、はなく、むしろ気持は落ち着いて、 おだやかにいることができる、・・・吹き抜けには、二階から一階に流れ 落ちるようにして、銅板が飾られている、一階と二階をつないでいるの かもしれない、もしかしたら、一階から二階に向かって、舞い上がろう としているのかもしれない、とにかく、一枚の銅板が、空間をまたいで 存在していて、その流れを包むように、一階の壁にも銅板がぐるりと一 周飾られ、二階には石狩シーツの原稿が順番に展示されている、いま ぼくがいる場所には、異なる二本の時間軸が流れながら、同時に、それ ら二本の時間軸を縦断する流れ、時間軸ではない、異なる二本の時間 軸をこの空間につなぎとめておくための、くい、のような縦軸がある、 息を継ぎ足すように見て感じて揺れる感性のまま、こうした切れ目の定かで ない文章が続く。引用が長くなるのは、その所為である。 さらに会場に流れている石狩シーツの朗読と銅板の展示の融合が語られる。 石狩シーツの言葉が、声が、ギヤラリーに堆積してゆく、だんだんと、銅板 との境目があいまいになってくるように感じる、僕が銅板を撮っているのか ここにあらわれてきているごーじと向き合っているのか、わからなくなる、 むしろ、銅板を撮ることと石狩シーツから流れてくる言葉や声を撮ることは 同じことなのかもしれない、・・ 翌日のエルムゾーンの旅、最後の遺跡公園の行程で、彼は吉増さんを見詰め、 小さな発見を語っている。先に立って案内し歩いていた私には初めて知る瞬間だ。 ・・・ふと、ひとりの人がさっきまで歩いていた空間を振り返る、なんともいえない 場の力を感じる、ちょうど太陽が沈もうとしてしている光景にかさなったからかも しれない、それでもなにか不思議な強い力を感じて、足を止めてしまう、少し離れ たところにいるごーじは、じっと見つめている、やがてカバンからGRを取り出して 身を乗り出すようにしながら何枚かシャッターを切る、切っていた、 ・・・いま目の前の光景を見ながら、目の前の光景でないものを見ようとしている、 その先にあるものまでをつかもうとして見ている、そんな瞬間だった気がして、 ぼくは忘れることができない、・・・ この手紙を読み終えた時もうひとりのY、吉増さんからfaxが入ったのだ。 たったいま入手いたしました日程です。 その内容はA新聞社の企画で、石狩河口に撮影・詩創作の為訪れる日程の 連絡であった。 吉原さんの捉えた吉増剛造(ごーじ)の遠くを見つめた瞬間は予言のように、 この石狩河口ふたたびの訪問を示唆していたのである。 ふたりのYからの手紙とファックスは、凍結した一月の空気を裂いて、如月二月へ 鉄橋のようにキラキラした石狩の海へ架橋してくれたように感じさせてくれた。 二月エルムゾーンで始る鉄とガラスの「野傍の泉」展と呼応するかのような吉増 剛造の石狩河口撮影行。 凍てついた空気が、非常に有機的な柔らかな風景として甦ってくる。 見えない川が今、音を立てて流れているかのようだ。 *阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉」展ー2月14日(火)-19日(日) am11時ーpm7時。 *同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2012-02-02 14:26
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