人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2012年 01月 27日

ワインを持ってー睦月(13)

岩見沢教育大2年の瀬戸くんがワインを一本持って来た。
豪雪の続く岩見沢。そこで暇を持て余した訳でもないだろうが、休講で
札幌に出て来たという。
何も言わなかったが、私の手首骨折のお見舞いだったのかも知れない。
昨日書いたブログの阿部守×高臣大介展の案内状の話をすると、瀬戸
くんの目が輝いてムラギシさんの個展のタイトルを口にした。
「木は水を運んでいる」ですね、と言う。
瀬戸くんがここに来るようになったのは、このムラギシの追悼集を高校
時代に釧路で読んだ事が切っ掛けだった。
そうか、ここでもムラギシが出てきたなあ、と思った。
1996年の阿部守展と高臣大介展のちょうど間に位置して、しかもその時
のムラギシ展のタイトルが今度の湧泉とエルムの木を主題とするふたり展
と交響する事にあらためて気付かされたのだ。
その後瀬戸くんの持って来たワインを開けて、そっと棚に飾ってあるムラギ
シの遺影にもふたりでワインを捧げたのだ。
山田航さんや有山睦さんもそうだが、瀬戸くんも生前のムラギシに会って
はいない。
彼らはみな死後出版された遺作集を通してムラギシに親愛の情を抱き、
この場と繋がったのだ。
ある意味では彼らの方が生前の知遇より、より純粋に深い処でムラギシと繋が
っているのかも知れない。
村岸宏昭の「木は水を運んでいる」という最後の個展が、清華亭を会場とする
緑の運河エルムゾーンの泉と森の記憶を主題とした阿部守×高臣大介展の
トニカのように背後に流れているような気がしてならないのだった。
そう気付かせてくれたこの日の若い友人の瀬戸くんの訪問に感謝するのだ。

今朝ファックスが吉増剛造さんより届く。
某大新聞社の依頼で石狩河口に一日滞在が決まったと言う。
そこで新たな詩の創作を試みるという。
先月の吉増剛造「石狩河口/座ル ふたたび」展では、実現出来なかった石狩
河口行きが、こうして本当に17年ぶりに実現する事となった。
昨年暮に発火したこの火種は、今も確実に燃えさかっている。
さらに北海道立近代美術館からの告知が届き、友人の花田和治さんの個展が
来月から始るという。
佐佐木方斎さんとともに、ここテンポラリーの再建期を支えてくれた友人である。
早速お祝いの電話をする。
最近は体調を壊し会う事が少なかったが、こうして優れた作家の今までの仕事
が公的に再発見される事はとても嬉しい事だ。
そしてちょうど私が骨折した翌日で見落としていた新聞記事を、有山睦さんが先日
持参してくれた。その記事はベルリン在住の谷口顕一郎さんが、世界の若手美術
家百人のひとりにドイツの美術雑誌で選ばれたという内容だった。
今年に入って種々落ち込むような事も多かったが、こうして新旧の友人たちの
活躍と友情が大いなる励ましとなって今の自分を支えてくれる。
このところの連日の水道凍結・怪我の片手不自由などに落ち込んではいられない。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)展ー2月14日(火)-19日(日)
 am11時ーpm7時
*同上清華亭外庭展「野傍の泉」-2月13日(月)ー26日(日)予定。
 am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2012-01-27 12:47 | Comments(0)


<< 凍結の日々ー睦月(14)      活字の窪みと地形ー睦月(12) >>