2年ぶりの森本めぐみ滞在制作展がスタートした。
前回同様白の薄いビニールの幔幕が張られて、直接製作現場は見えない。
メリハリの赤いテープがポイントになって幔幕に強弱をつけ、その内部は
人影がうっすらと見える程度である。
今日から月末まで、休日と仕事の合間を縫って制作が続く。
今回のテーマを象徴する火山と海を描いた2枚の絵が、奥入口と表入口脇
2ヵ所に貼られている。
火山は幻の支笏火山をイメージし、海はその火の大地と対峙する水の地平
であるだろう。
今住む故郷恵庭市はそのふたつ、火山と海から遠い内陸の地である。
今年初めの大学卒業制作展では、支笏火山の噴出物・軟石を素材とし表現
していた。通称札幌軟石といわれる支笏火山の産物である。
支笏火山の大噴火の後、その巨大な窪みに水が溜まり、現在の支笏湖と
なったという。
自らの生まれ育った大地の創生をそうした地質上の生成過程から捉え直し、
現在生きている場の位相を再構成しようとする作品、と考えてもいいと思う。
そう思って薄い皮膜のような幔幕とメリハリの赤いテープを見ると、そこは
まるで噴火前の溶岩の白熱した透明な殻のようにも見えてくる。
この装置自体が、ひとつのインスタレーシヨンとなっているのだ。
折りしも雷鳴が轟き、激しい雨が音立てて降り注いだ。
その後一瞬陽光が射し込んで、薄い皮膜は赤い縁取りとともに繭(まゆ)の
ようにも見え、銀色に輝く。
2年前はここから地平線を持ち上げる太陽のような少女像が生まれたが、
今回はいかなる火の像が生まれるのだろうか。
この後の展開が楽しみである。
*森本めぐみ滞在制作展「ものもつ子のこと」ー10月12日(水)-30日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休。
*予告吉増剛造展11月前編「1994年石狩シーツ誕生」・
12月後編「石狩川坐ルーふたたび・・・」
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503