2011年 07月 22日
植物に詳しいK氏からメールがある。 昨日書いた撫子(なでしこ)は正式名称をカワラナデシコといい、 北海道にもあるそうだ。北海道ではエゾカワラナデシコが正式名称と いう。そう聞いて植物図鑑を調べると確かに載っていた。 普通の辞典には「なでしこ」で載っていて、カワラもエゾも付いていない。 エゾやカワラは学名という事だろうか。 野草にエゾが付く植物が多いのは知っていた。 エゾエンゴサク、エゾニュウ、エゾマツ等々、本州のものと比べて 全体に大きいのが、エゾと付く特色であると聞いた事がある。 反対にヒメが付くと全体に小さいものが多いと聞く。 そうするとさしずめ、スイーツ・アートの方は、織姫たちという事なので、 エゾではなく、小振りのヒメ系ということになる。 気候・風土によって同じ植生でも、その形態が違う。 蕗などはその代表的な例で、大体が北海道の蕗は本州のものに比べて 大きいのである。ラワン蕗は例外としても全体に大ぶりである。 逆に竹の子は、こちらでは笹竹の子が主で小さく細い。 植物や昆虫は風土に適応して生きているが、人間は必ずしもその点で正直 ではない。 現代の都市は特にそういう傾向にある。 本来風土は、そこに住む人間にも影響を与えて、芸術にも民芸として独自に 発達していたが、電気的増幅の情報社会では、そこに風土の影響は寡少に なってきている。 それは流通の利便性も生むが、同時に物の画一化も増幅している。 それを風景としてみれば、街の佇まいが何処も同じ顔をしているのが現代の 都市である。 そこに固有の街の佇まい・香りが消えてきている。 文化とは固有の風土を土壌として生まれるのが、王道と思うが、 スイーツ・アートのような位相には、この固有性は消えてどこでも共通の 甘い生クリームのような香りがする。 一般的受けを狙い、それを芸術の本質的普遍性へとスライドする。 そこで言えることは、筍と笹竹の子とは植生と風土の相違という前提を 無視して、美食で括る流通の安直性である。 これは作り手、生産者の側の意識ではない。あくまで流通の利便性に 基づく意識だ。 なでしこにしても、これも植生というよりはある形容詞の流通として 冠された流通語でもあるのだろう。 男はサムライジャパン、女はナデシコジャパンで、かってのフジヤマ・ ゲイシャと似たようなものである。 流通言語として言葉もスイーツのように個々の固有の風土を離れて、 ひとり歩きをしていく。 それも言語が保つ流通の側面だろうが、それとはまた別次元で固有の ものを追求していくのが、真の文化の源泉であり真摯さである。 従ってなでしこが正式にはカワラナデシコであり、北海道ではエゾカワラ ナデシコであるという固有性の厳密化に、学問や文化の基盤がある。 多分その相違が、植物辞典には「ナデシコ」では載らず、普通の言語 辞典では、ただの<なでしこ>で載る根拠と思う。 職人という芸(アート)の特化・専門化が、芸術(ファインアート)を生む ように、芸術家も本来その個々の固有性の特化にこそ価値が生まれる。 決して<スイーツ>美食一般や、<なでしこ>美化一般で自己満足し て良い筈が無い。 *「海に沿って」アーカイブス展ー7月26日(火)-8月7日(日) am11時ーpm7時。:戸谷成雄・佐佐木方斎・上野憲男・佐々木徹外。 *西田卓司展ー予定 *及川恒平フォークライブ「まだあたたかい悲しみー其のⅣ」 8月21日(日)午後5時半~予約2500円当日3000円。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-07-22 14:26
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