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テンポラリー通信

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2011年 05月 15日

May may beー燃える春楡(12)

可能性を表わすmayと、5月を意味するMayが同じ綴りである事。
そんな5月に10万年経っても消えない高濃度の放射性廃棄物が、
今も排出され続け、行き場もなく封印される。
そのドキュメントの映画が公開されるという。
折りしも今また、福島原発事故の新たな困難が報告された。
10万年といえば、人類誕生と同じくらいの年月である。
トイレのないマンシヨンに入居したようなものと、誰かが言っていた。
産業廃棄物最終処理場ーランドフイルを、さらに超えて処理できない廃棄物。
それを密封し封印し深い地下に格納する。
それは最終処理ではない。封印なのだ。
Mayという美しい可能性に満ちた季節と対極の、
パンドラの箱のような世界が拡がる。
Mayという地球ランドと対極の、mayを否定の可能性にする
地球ランドフイルを今見詰める。

<花>を主題とするカタログテキストを何とか書き終え、ドイツに送る。
東北の遅い春にも桜は咲いた。
その桜を見て喜ぶ被災地の人たちの映像を見た。
花は一瞬のようなものである。
はるかに長い<無花>の時間がある。
草であれ、樹であれ、長い<無花>の時間がある。
根は水を求めて、地に根毛を伸ばし
枝は光を求めて、空に梢を伸ばす。
この光と水を希求する寡黙な長い時間。
その長い寡黙の一瞬の微笑のように、花が咲く。
そこに美を見、神を見るように、人は<花>を見る。
だから<花>は、ただの植物素材ではない。
今被災地の方々が直面している困難とは、正にこの<光>と<水>に
関わる事態なのだ。
原発事故が惹き起こした事態も、そこに行き着く。
一瞬の<花>に美を見、神を見てきた日本人の優れた感性が、
今正にその正反対の環境に脅かされている。
野草も土も空気すら見えない汚染に脅かされている。
パンドラの箱は封印を解かれ、水と光の中に忍び込む。
漁師は魚を諦め、農家は畑を棄て、酪農家は牛馬を見殺しにする。
水と光が汚染されているからである。
そんな中で地域の桜木に花が咲く。
そしてそれを笑顔で見上げている。
何も変わらず今年も花が咲いた。
その事に喜びを見ている。勇気のようなものを貰っている。
桜の花だけではない。
野の花も咲く。
May、5月なのだから。
may、可能性がある、明るい季節なのだから。
自然はそう告げてくれる。
しかし人間社会の構造は、違う。
ランドフイル(最終ゴミ処理場)すらまだ見つかってはいない。
瓦礫の山が続いている。
例え瓦礫の山が無くとも、村を町を学校を棄て、見えない汚染から
逃げなければならない。
そんな中でも、花は咲いたのだ。
水と光・地と空を繋いで一点垂直に生きているもの。その微笑。
だから人は花を見る。
書いた「花心伝心」の主旨である。

*鉄・インスタレーシヨン 阿部守展ー5月20日(金)-6月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-05-15 13:38 | Comments(0)


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