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テンポラリー通信

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2011年 04月 14日

神戸の人ー風の土(11)

「記憶と現在ーそのⅢ」展の案内メールの反応が遠くからもうひとつ、
神戸在住のN氏から来る。
こちらも先に大震災があった地域である。
N氏は優れたデザイン力をお持ちの方で、もともとは自動車の
デザインをしていた人だが、コンピューター全盛の世の中になって
からは、陶芸に転身した。
粘土で車のデザインを仕上げる方法が、コンピューターにとって代わった
からである。従って氏の創られる陶芸作品は、非常にモダーンである。
いわゆる陶芸の臭みが全くない。
以前のスペースで何度か個展をして頂いた。
そのメールには、懐かしい顔がありますね・・と書かれていた。
氏の個展時何度か会ったり、見たりした作家の事である。
今回の「記憶と現在ーそのⅢ」展は、そうした作家たちの作品である。
そしてふっと思った。
実際に奥の収蔵庫から作品を久し振りに出し展示して見ると、
懐かしさよりも新鮮な感じを持って見ている自分に気づいたのだ。
<鎮魂>と<祈り>を主題に実際に展示して感じていたものは、
実にこれら作品の新鮮さである。
かっての個展時に展示されていた時とは、また別の光を発している。
むしろ今の状況・時代の光を浴びて、作品が今を主張している。
この事実は私にはとても嬉しい事であった。
優れた作品とはきっと万華鏡のようにアクセスによって光の発し方が
違うのである。
そして今咲いている福寿草を思い出したのだ。
福寿草は毎年春一番に咲くのだが、それは決して同じ花ではない。
作品もまた同じである。今の今に咲く。
そう思った時、この作品たちと積み重ねてきた時間が私自身の土・土壌
のように感じられ、少し嬉しかった。
遠くから、<懐かしい顔ですね>と声が届いて、はっと気づいたのは
その時間の土の事である。
あっ、今年も咲きました。とても新鮮に咲きました。
そんな風に展示されている作品に今を、話しかけてみる。
花開いた福寿草、フキノトウ、そしてこれから咲くエゾエンゴサク、
ニリンソウ、キバナノアマナ等々、
この花たちと同じように、作品たちも、今を花咲いている。

*「記憶と現在ーそのⅢ」展ー4月12日(火)-5月1日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 :一原有徳・村上善男・佐々木徹・坂口登・鯉江良ニ・安斎重男・
  上野憲男・西雅秋・岡部昌生・野上裕之・神内康年・甲斐扶佐義
  藤木正則・古川糸央・アキタヒデキ・高臣大介外展示。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-14 13:16 | Comments(0)


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