2011年 04月 07日
今年初めて自転車に乗り通勤する。 競馬場脇の道はまだ雪が凍っていて轍(わだち)となっていた。 両足をペタルから外して、地を蹴りながら進む。 直進すれば大丈夫。斜めになると車輪が滑る。 北大エルムトンネルの上の道は3分の2がまだ雪に覆われていた。 木の芽が吹いて、森に赤味が増している。 昨日は暖かく、晴天だったが、今日は曇り日で気温も低い。 夕方から雨の予報もあり、帰りはまた歩きか地下鉄となるだろう。 帽子も冬用から顎紐の付いた夏用の帽子を被った。 冬用だと風に飛ばされるから。 風、空気の匂い、木の芽、体全体で風景に触れる。 地下通路・地下電車にはない五感に触れる空気の刺激が、心地よい。 東太平洋大災害を他人事とは思えず、今も日々続く原発事故のニュースに 心痛む毎日だが、日常の些細な事に目の行く時がある。 今日も津波で流された写真・アルバムを専門に探しているボランテイアの 人たちの紹介があった。 記憶を記録した一葉の写真。それすら無くした人たちへの手助けである。 普段押し入れの奥にしまわれているこれらの記録。 それがこういう非常時には、突如貴重な大切な心の支えとなる。 記憶の記録。記憶と現在。 人は昨日を抱いて今日を生きている。 自転車のライト電池補給に単2電池を探したが何処も品切れだった。 こんなところにも災害の余波が繋がっている。 そういえばスーパーの棚にも空きのある棚がある。 ヨーグルトも品数が少ない。 これからまだまだいろんなところにこの影響は姿を表わすだろう。 自分が出来得る範囲で、自分の仕事を通して今<祈る>事を考えた。 それが現在展示中の「記憶と現在」展である。 私と共にこれまで散逸せずここの今にまでついて来てくれた作品たちを、 <祈り>のコンセプトで展示してみたかったのだ。 ここで出会った、ここでしか出来ない顔合わせの、優れたメンバーたちである。 有名無名でもなく、年齢でもなく、出身地でもない。 一原有徳「鏡面ステンレス+アセチレン焼+フォートエッチング」3点組み 村上善男「常盤村紙円の繰り」 佐々木徹「コラージュ」 (以上故人) 坂口登「精神と野草」 上野憲男「水原にて」 安斎重男「掌のジャコメッテイ」 岡部昌生「砂澤ビッキ神の舌彫痕」 西雅秋「AIR HIROSHIMA」 野上裕之「BAKEDWORLD」&「鳥」 (以上1階スペース) 神内康年「UNTITLED」 上野憲男「海の外側に沿って」銅板画5点組み 藤木正則「界川游行」ほか。 アキタヒデキ「異」から2点。 X氏「猿・縁」 高臣大介「冬光」 (以上2階回廊部) 現在「記憶と現在ーそのⅡ」として10日まで展示し、さらに第三期として 新たな作品群を加えて展示を続ける所存である。 私自身は作品を作るわけではない。 ただこうして縁あって手元に所蔵されている作品たちが、私の心を深く 伝えてくれている事を今感じている。 それは展示のコンセプトに充分に応えてくれるそれぞれの作品力があるからだ。 すでに故人となった作家の作品もある。 しかし生死に関わらず作品は充分に雄弁である。 そして活き活きと空間を象嵌し、陽光の中で輝いている。 まるで今まで出番を待っていた役者のように新鮮なのだ。 私が私なりに培ってきた時間の記憶と記録が今ここで、<祈り>として 結実する美しい展示となった。 よく見ていただければ、ここには原発も海も都市も歴史も寄り添う姿も 今回の被災地にも見る多くの要素が作品に象嵌されて在るのだ。 *「記憶と現在ーそのⅡ」展ー4月10日(日)まで。 am11時ーpm7時。月曜定休。 *「記憶と現在そのⅢ」-4月12日(火)-5月1日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-04-07 13:21
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