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テンポラリー通信

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2011年 04月 05日

風の往還ー風の土(4)

6月に京都で個展をする藤谷康晴さんが、フライヤーを持って来た。
大判のフライヤーで、碁盤の目の市街地の内に妖怪が蠢いているような
今までの彼の仕事の節目が感じさせる気合の篭もった出来映えである。
タイトルは「CITY NECROMANCER」。
都会の魔術師・占い師とでも訳すのだろうか。
都会とその奥の魔の存在を主題にしてきた藤谷さんが、京都という古郡に
初めて挑戦する決意がこの大判のDMにひしひそと感じられ快かった。
一ヶ月滞在し、ライブドローイングと展示を挙行するという。
札幌の都心一番街を精細なビル群の描写で表現した最初の個展に始まり
、さらにそのデジタルな市街地の奥に潜む魔を描き続け、ついに日本の
都市の原型である京都へ歩を進める。
この軌跡は同時に札幌論ともいえるラデイカルな軌跡である。
ここ札幌は百余年前の明治時代西の京(みやこ)を模し、次に東の京
(みやこ)を模して造られた都市である。
札幌生れの藤谷康晴さんが画業の上で継続している仕事は、自らの生まれ
た場の美術的都市追求、美術的都市追体験でもあるのだ。
フライヤーに使われた大作に見る格子状の都市像は、京都でもありながら
同時に札幌でもある。
この都市皮膜の下に実体として眠るなにかを剥ぎ取り、触れる事。
その追求・挑戦を、彼は多分自らの肉体を賭して今回実践する事になるだろう。
札幌の都市構造を究極の千年の都まで遡り身体化する。
これも風土という見えない風の源へのひとつの挑戦と思う。
京都という千年の古郡が近代に伝えられた札幌という都市構造の
風の都市論である。

同じ日帯広のH氏が市役所ロビーでの山田航・文月悠光のライブの様子を
伝えてくれた。
H氏は山田さんの真摯な語り、朗読にすっかり感服したようだった。
さらにMさんも見えて、同じように熱い感想を披瀝してくれる。
ふたりともライブが終ってから真っ直ぐにここへ来たのだ。
1時間以内のその場の風の便りである。
すべての現場に人は立ち会う訳ではない。
しかし熱いものには風が立つ。
そしてその風はここまで届くのだ。
藤谷さんの京(都市)への肉迫、山田さんの歌への使命感。
千年の都心へ、そして百余年の都心からと、この場末の鄙びた画廊から発した
小さな風は往還して、新たな現場の風となって届いてくる。

*「記憶と現在ーそのⅡ」-4月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-05 14:10 | Comments(0)


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