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テンポラリー通信

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2010年 10月 22日

白い季節ー秋のフーガ(17)

雪虫が飛び、白鳥が夜空を飛んだ日。
翌日の天気予報にはもう、雪だるまのマークが載っていた。
来週早々初雪が見られるかもしれない。
競馬場の壁の蔦はまだ半分しか赤くなっていないのだが、
冬将軍の到来は、もうその足音が聞こえてきた。
昆テンポラリー展もあと二日。
5人それぞれの領域、現代詩、現代短歌、美術、さらに昆虫学、役所関係、
博物館関係と多士済々の人が訪れてきた。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」との関連もあり、たかが昆虫、されど
昆虫である。
伊藤組土建の会長宅1万4千平方mの敷地に棲息する昆虫の数は、
どれほどあるのか、木野田さんが手稲星置の自宅庭で観測した数は、500
種というから、伊藤邸庭には恐らく3000種はいるだろうと推測していた。
植物園ー清華亭ー北大構内に連なる緑のゾーンである。
個人邸でもあるから、他の公共的空間よりさらなる自然密度があると
考えられるからだ。
<伊藤邸の昆虫>として、調査・記録をさせて欲しいなあと木野田さんが
呟いていたのを思い出した。
繋がる森のゾーンから、伊藤邸庭へと逃げ込んだ希少種もいるかも
知れない。
もしあの原生林の面影を残す庭が、駐車場や高層ビルになったとしたら、
もう昆虫たちもエルムの大木も消滅して、空に直線、地に新幹線の直線
と物流とその量数を埋めるだけのつまらない世界となる。
昆虫たちの眼からも、人間はその視座を学ばなければならない。
樹という天地に立つ直線は、命の祈り、凛々しい直線・垂直軸である。
その一本一本の樹の集まりが、森という小宇宙を創る。
そこに小さくとも固有の有機的な昆虫たちが、森を耕している。
その微細にして繊細な生き物たちが、森をさらに有機的な宇宙に
育てていく。
高層ビル群の林立する都市に奇跡的に残された虫たちのワンダーランド
、この緑の運河をなんとしても後世に引継ぎ残していくのは、文化の使命
であると、あらためて思い至っているのだ。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
 ・文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)
 :企画原案・熊谷直樹・
 :企画協力・札幌市博物館活動ッセンター・テンポラリースペース。

 テンポラチースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-10-22 12:34 | Comments(0)


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