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テンポラリー通信

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2010年 08月 05日

樹の声ー森の記憶(25)

予定より早くお坊さんが見え、早めのお盆のお経が終る。
お坊さんもこの時期は多忙そうである。
遅くなると思っていたが、早めに終ったのでテンポラリーへ。
今朝は遅くなると唐牛さんに昨夜伝えていたが、通常通りの出勤となる。
昨日の「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の署名呼びかけ文に、
早速反応がある。
東京在住のふたりである。
離れている人の方が反応が早い。
きっと小樽運河保存運動の時もそうだったのだろう。
身近な人には卑近な利害がどうしても絡む。
小樽運河全面保存運動の先頭に立ったA氏は、その後さまざまな圧力を
受け、泣く泣く事務局長の席を降りたと聞く。
その後半身不随となり、右手に絵筆を縛り付け真っ赤な運河の絵を描いた
と、奥様が後年回想している。
<真っ赤な運河>!その執念を思った。
地元にもこうした先人がいた事は、ずっと後から分ることである。
最初は旅人の眼が運河の美しさを称えて、喧伝されたのである。
地元は当時の政財界から、こんな臭い運河はさっさと埋め立てた方が
地元の利益になると「地産地消」が推進されたのだ。
その中で孤立無援のA氏は明治30年創業の老舗の生粋小樽ッ子として
この小樽の象徴である運河の保存に命を賭けたのである。
昨年奥様の自叙伝の中で、こうした人の存在を知り、ある感動と衝撃を
受けた事は忘れられない。
翻って札幌はどうなのか。その思いが正直駆け巡ったのも事実である。
人口増加や都市の規模においてのみ、都市のありようがある訳ではない。
如何に自分の生きている場所を真摯に見つめ生きているか。
そうした人の存在こそが重要である。
自分はなにもそうした人に自分を準(なぞら)えている訳ではない。
ただそうした人がいた小樽の真の底力を尊敬し、他山の石と感じているのだ。
表面だけ繁栄しているかの如き支店経済、金融植民地都市の側面だけでは、
この街は自立できないと思うからだ。
多分一本の樹の存在がその事を誰よりも雄弁に語ってくれている気がする。
私のハルニレ、エルムからのメッセージは、そう語っている。
勿論エルムだけではないのだ。西方の山並みの麓に立つ桂の木、
かっていた円山北町の銀杏の木、前の建物と共に育った白樺の木。
人の声が違うように、それぞれの木の声を受け止めてきたのである。、
緑の頭をした人類の一番古い友人たちは、その都度いつも声無き声を
送ってくれる。
地を生きる真っ直ぐなこの旧友たちは、東京や大阪、九州にあっさりと
飛んでいったりは決してしない。
そうだ、小樽という港町にも支店を出す訳でもない。
石狩の、札幌の大地に、愚直にもただただ立って生きているのである。
物流とは正反対の、この動かざる垂直な樹木の生き方を私は尊敬し学ぶ。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」ー7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-05 11:50 | Comments(0)


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