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テンポラリー通信

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2010年 06月 29日

真摯なる過剰さー木霊(こだま)する(24)

最初見落としていた。
正面の左壁上に鴨居の跡があり、その裏側に石狩浜で座礁したヴェトナム船
の写真が隠されて展示されていた。
アキタヒデキさんの作品である。
横幅1m強、縦幅30cm程のこの作品は、左手壁の冬の石狩と
対をなすようにある。
なんとも心憎い展示で、正面から見ただけでは見過ごしてしまうものである。
正面の壁一面を埋めているヴェトナム放浪の写真に呼応するかのような、
この座礁した船とは、隠されたアキタヒデキの心の在り処でもあるのだろうか。

3人が3人に共通して私が感じるものとは、それぞれの内なる過剰性とでもいう
べきものである。
その心の突出した過剰性を一見前面に出して、その中で孤独を見据える
アキタヒデキの世界は、時としてそっと座礁した船のようにシャイである。
また都市の川を見据えるメタ佐藤の世界は、モノクロームで静謐でありながら、
息を溜めて境界を凝視する熱い過剰性を保つ。
日常を幻視化し、夢の記憶の一片のようにピンで留められた竹本英樹の
作品は、日常現象に対して非日常への過剰なる思い入れが窺える。
円ではなく、この3人展が三角として措定され企画されたのは、
それぞれの突出する過剰さゆえであると思う。
円(まる)ではなく、3人が3様であるゆえの三角なのだ。

会場竹本英樹さんの作品に異常が発生。
誰かが触ったのか、落としたのか、虫ピン4つで浮いて固定された作品に
皺のようなものがある。
生フイルムのような柔らかな表面が歪んでいるのだ。
日曜日朝少し遅れて会場に着くと、アキタさんも竹本さんも来ていた。
竹本さんはかなりショックだったようで、私が2階に上がり降りるともう
作品を撤収して帰った後だった。
その後連絡し、後から会場でも話したが、代替えの作品はもうなく、
同じ作品のファイルだけを展示し、再度の展示はしないという事だった。
繊細な作品でもあり、繊細な展示である。
展示としては残念ながら3人揃わず、二角展のように今週はなる。
止むを得ない事とはいえ、この出来事もまた真摯なる過剰さゆえでもある。

*写真家集団三角展「パラダイムシフト」-7月4日(日)まで。
 am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-06-29 14:25 | Comments(3)
Commented by nishikawa at 2010-06-29 16:04 x
木曜日に鑑賞しようと思っていた者です。竹本英樹さんの作品をホームページで見て楽しみにしていたのですが、会場にはもうポートフォリオのようなものしか置いていないということでしょうか。
Commented by コトリ at 2010-06-29 16:16 x
竹本さんのblogで読みました 自分は会期中はやめに行って(早くみたかったからですが)みてよかったけど、残念です
Commented by テンポラリー at 2010-06-29 17:58 x
nishikawaさま>残念ながら今の所そういう事です。


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