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テンポラリー通信

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2010年 04月 23日

心の手が伸びて、ハイタッチー早春賦(16)

沖縄の豊平ヨシオさんから電話が来る。
N氏が不意に札幌から訪ねてきたという。
毎年のように今頃沖縄を訪ねるN氏とは、昨年私も一緒に行ったのだが、
豊平さんはあまりN氏を好いてはいないようだ。
アイヌ的生き方を実践しようとしているN氏と、沖縄人としてその哀を深く
刻み込んだ作品を創り続けている豊平さんとは、どこかで微妙に
ずれている。それは、生きている<哀>の位相が違うからと思う。
その後息子さんの話になり、海外にいる息子さんに村岸宏昭遺稿集を
送ったら、返事がメールで来たと、その内容を読んでくれる。
同じ世代の人間として、全部は分らないが心に響くものをいろんなページから
読み取っているというような内容だった。
何度も読んで大切に読み込む息子さんの気持ちが、豊平さんの文面を読む
声にも溢れていて、嬉しかった。
アマゾンを経由して5冊取り寄せ、これはと思う人たちに贈呈していると
豊平さんから以前聞いてはいたが、こうして実際にその反応を声に出して
聞かせて頂き感激である。
ムラギシは、こうして未知の人の心に今も存在して生きている。
本という媒体、CDという媒体は、過ぎ去る時間を結晶し、今に留める。
今年よりも来年夏来て下さいと豊平さんの要望がある。
その頃には今制作中の作品群は、より一層完成度を増している
からとの事だった。
昨年2月、ただそれだけの為に半日アトリエにお邪魔した。
青一色の地に縦の亀裂の入った百を超える作品群の、強烈な哀は
忘れ得ぬものがある。
遺言のようにこの作品群を黙々と創り続けている豊平さんの真心を感じ、
再び訪れる日を楽しみに、心して待つ事にする。
それまでお互いに生き延びましょうといって、電話は終った。

ドイツ在住の谷口顕一郎さんから、メールが届く。
秋の札幌個展の日程と昆・テンポラリー展の参加の意向である。
是非デッサンで参加したいという。
前回ここでの個展で甲虫の大きな絵を展示していた彼は、
やはり虫好きだったのだ。
森本めぐみさんの落花生と指の素描にも大いなる関心を示していたが、
彼女に会う事も楽しみにしていると書かれていた。
大学入学時のムラギシを最初に見出し、私に紹介したのも谷口さんである。
彼はそうした人間に対する臭覚に優れたものがある。
今年秋の谷口展、昆・テンポラリー展は面白い出会いの時となるだろう。

人が人と会う。その事に作品の存在が純粋媒介として存在する。
ただただ過ぎ去ってゆく時間は、この時結晶して有機的な超空間となる。
死者も、遠い場所も、時間さえも超える。
生きていて勇気をもらうのは、そうした時があるからである。

心の手が伸びて、心にハイタッチ。
豊平さん、ケンちゃん、ありがとう。
Mよ、そうだろう?

*藤谷康晴展「ANALOG FLIGHT SAPPORO→」4月25日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2010-04-23 12:10 | Comments(2)
Commented by はぎ at 2010-04-23 16:04 x
あなたには、
遠い場所からの声がよく響きますね。羨ましいです。
近い場所からの声が無いのですね。悲しくなります。
Commented by kakiten at 2010-04-24 12:23
はぎさま>心になにか突き刺さるような・・。
どなたか存じ上げませんが、ありがとうございます。


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