昨夜来の暴風が少し去り、青空がのぞく。
昼前家を出る。
今日は休廊日だが、最後の展示作業に立ち会う為出廊。
日が高くなっている。
自分の影が身体近くに路面に映り、銅像のようだ。
真冬、陽光はもう少し影が長く前に伸びていた。
私のスフインクス頭が、今日は銅像頭である。
確実に冬は過ぎようとしている。
瞬間風速33mと今朝の新聞は報じていた。
春一番の嵐なのかもしれない。
及川恒平さんの4年越しのCD「地下書店」が発売されると知る。
糸田ともよさんの歌集「水の列車」に触発されるように、歌曲を創り、
新たな及川恒平ワールドを創ってきた。
北への視軸、その発露が声に詩に、旋律に生きている。
遠い時間を経た北への往還でもある。
空知で生まれ、釧路で育った及川恒平の自己発見の旅でもある。
東京の大学時代にすでにフォークブームに乗り、プロの道を歩んで
来た及川恒平が、4,5年前から札幌を中心に北回帰を試みた。
その中心にあったのが、札幌在住の歌人糸田ともよの歌集「水の列車」
との出会いである。
このたった一冊の歌集との出会いが、その後4,5年かけた今回のCD
に凝縮されている。
糸田の短歌をベースに歌詞は縦横に組替えられ、その声、メロデイー
は原作とは異なる、及川恒平自身の世界を歌い上げている。
糸田の短歌が保つ都市の中の暗い殺意、女性の保つ懐剣のような
ギラリとした精神性は、本来の及川恒平の世界には希少なものだ。
そのギラリとしたある種の都市性を、及川恒平は自らの歌に取り入れて
いる。その代表的な曲が、今回発売されるCDのタイトルともなっている
「地下書店」である。
たそがれの地下書店に一通のメールが届く
と始るこの唄の感覚は従来の及川恒平の世界には希薄だったものである。
透明で澄んだ生来の声質には無かった、都会の翳のようなもの、時として
殺意のようにも感じられる刃の翳、陰影が、澄んだその声に宿る。
これは詩が保つ言葉の力でもあると思える。
まだ出来上がったCD自体を聞いているわけではないので、CD全体の
感想ではないが、今まで聞いてきたライブでの感想である。
ともあれこうしてひとつの作品が、札幌で完成した事は嬉しい事だ。
3人の展示はいよいよ大詰め。
まるでとび職人のように、秋元さんが梁を伝い鳥を吊らしている。
本人自身が鳥のようになっている。
森本さんは黙々と、最後の一枚を仕上げている。
太田さんはまだ、自宅でみみずの形を作っているようだ。
3人3様の展示姿勢が、それぞれに表れて夕刻には完了するだろう。
*「触れるー天・地・指」展ー秋元さなえ・太田理美・森本めぐみー
3月23日(火)-4月4日(日):月曜定休・休廊。
*藤谷康晴展「ANALOG FLIGHT Sapporo→」
4月13日(火)ー25日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503