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テンポラリー通信

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2010年 03月 10日

触れる風景ー夢界(ゆめさかい)(9)

休廊日半日歩いていた所為か、首から上の緊張が消えて、体調が良い。
やはり私は足の人間。
五感が冴えて、風景に触る。
心澄ます祈りの直線路。自然と交感する緩やかな曲線路。
軽やかな寺院の屋根のカーブ。社(やしろ)の交叉する荒ぶる屋根。
人間の営みが屋根の形に顕われていた時代。
そこには、等身大の人の姿が垣間見える。
現在物流が主体となった都市の風景には、その息遣いが消えて
人も物と同じ物流の多寡に支配されているかに思える。
人や物が同時に量的目的で収納されるビル群、
立ち止って首を上げなければ、建物の全体を見る事が出来ない。
歩行のリズムの視界からは、消えてしまう高さなのだ。
見上げる大きさは、等身大の視界からは消去されている。
どっしりとした石造り倉庫とか木造の邸宅の方が、
余程視界には大きく感じられる。
道も同じである。
車の行き交う道路では車を避けて身を竦めて狭く歩くが、古い街道では
人間や馬車、生き物が主役のゆったりとした道である。
だから歩行のリズムに、俯瞰と凝視、新鮮な発見が散らばっている。
歩き初め、歩き深める。歩行の律動が活き活きとある。
そうした道を幾度となく探索し、歩き続けた。
そして見えてきたものは、人の夢の痕(あと)。
遠く離れた故郷への夢、新たな大地への夢。
それらが幾重にも折り重なって街を造っていた事だ。
今その夢の痕跡が跡形もなく消え、物流主体の街に変ってきている。
近代の夢の痕跡を繋ぐことなくして、今という時代があり得るのだろうか。
古い街道の道だけではない。
道庁の赤レンガ、北大の植物園、伊藤邸、清華亭、北大構内と続く
メム(泉)の連鎖、サクシコトニ川の道。
そこには百有余年の近代の夢とこの札幌の自然が、
交感しながら保たれている。
例えそれらが、巨大な官の力と裕福な富の力によるものだったとしても、
現在に見るタワー系の巨大建物よりも、はるかに豊かな人間の夢を
この界隈に潜め、孕んでいる。
その夢の痕跡こそが、真に公共としてRepublicされるものではないのか。
巨大地下通路のインフラ建設に血道を上げる前に、
短い近代の夢の痕跡を正統に今に受け継ぐチャンネルを、文化の回路
として保つ努力・持続なくして、この地の未来は開かれない。

歩き深める夢界(ゆめさかい)。
都市の翳をひたすら歩行する札幌夢界。
メタボリックな肥満都市、石狩の孤児札幌。
札幌漂流者のエッジの旅は続くのだ。

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月14日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*3人展「触れるー空・地・指」-3月23日(火)~

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-03-10 12:18 | Comments(0)


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