2010年 02月 11日
昼過ぎ、ドイツ在住のMさんが来廊。 閉廊時まで話し込む。 ギヤラリーに入るなり、”力あるねえ”と正面にある森本めぐみの大作 「なみなみとして、もつ」に感嘆してくれた。 さらに大野先生の舞踏資料展示には、賛嘆しきり。 さらに石狩河口公演ヴィデオを見せる。 welt=worldを感じてくれたようだ。 界(さかい)の豊かさ、線引きのボーダーではなく、自然と人間が本来保つ そのエッジ、際(きわ)の世界の豊かさ、新鮮さを語り合う。 夕刻少し体調不良の森本さんも見えて、あらためて紹介する。 さらに後志・常盤のOさんが来て、小樽の詩人高橋秀明さんとTさん が来る。 高橋さんは東京高輪で行われる詩画展に出品予定の作品を2点持参し みんなに評を求める。 2点とも出品するそうで、どちらが良いかという事ではなく、 描かれた絵の批評を求められたのだ。 みんながそれぞれに語り、私は遠巻きに見ていた。 ちょうど色んな人が居て、それぞれに見てもらいそれだけで充分と思う。 それからは、Mさんのドイツでの苦労話やら質問などであっという間に 時が経つ。 本題は、Mさんがさらなるヨーロッパでの日本の現代美術紹介の為の 企画の相談だった。 こちらからもそのコンセプトから作家を選び、Mさんの推薦する作家と 併せて展開するものである。 問題は×1ともなる主題の設定で、そこの話し合いが本題であった。 私は石田尚志さんを始め、何人かの推薦を考えていて、後は場所の 設定如何である。 いずれ現場にもいく事になるだろうが、その辺はMさんの領域である。 その前に普遍的で本質的な現代を、テーマとして打ち込む事が さらに必須である。 区別・差別・分断の境界ではなく、開かれた豊かな境界(さかい)の 復権こそがコンテンポラリーな主題と話す。 その意味でも、この日大野先生の石狩河口公演映像は有益だった。 究極の分断である生と死の挾間を再生する自然と舞踏の舞台だからである。 さらにそこには、西洋と日本という近代の挾間の幸せな融合もある。 大野先生の舞踏は、歌舞伎的遺伝子と西洋のダンスとの根源的対立と 根源的融和があるからだ。 白塗りの顔は、能面の伝統も入っているかも知れない。 しかし衣装も、バックに多用される音楽も、西洋のものである。 その違いを超えて、深く沁みる主題は人間の本質的生と死の再生、 生命の源泉の確認の賛歌である。 このヒューマンな主題の深みが、区別・差別・分断の境界を豊かな発見 、新鮮な世界へと、境界(さかい)を再生させるのだ。 もともと先住民族であるアイヌの世界観や近代以前の日本にもそうした 境界の豊かさはもっていたのだから、その意味をもっとアクテイブに現代に 再生させるべきなのだ。 例えば松尾芭蕉の有名な俳句にみる<静けさ>。 それは岩と蝉を分類・分別する思想ではなく、<岩に沁み入る蝉の声>という 間(あいだ)を繋ぐ声の位相の存在である。 この場合<静けさや>という芭蕉の表現した時間・空間は、 境界(さかい)の発する声の豊穣さでもあるのだ。 物のグローバル化という普遍性と対極にある、目に見えない境界(さかい)の 融合・媒介の思想を問う事は、極めてラデイカルで現代に求められる主題と思う。 大野先生はご無理だが、大野慶人さんには是非参加して頂きたいとも思う。 さらに帰国前にもう一度会う約束をして、Mさんと夜深けて別れる。 展示中の大野一雄頌展の大野先生が、ふたりを導いて下さった気がする。 石狩を遡る鮭。河口に辿りつき憩っている大小様々の流木ー小指の ような小さいものから、見たことのないような巨大な根。・・・ 川にせり出すようにしてつくられたステージは古いくずれた橋桁の枕 とドッキングし、川も鮭も、のぞきこんでいた羆も、押さえ切れないよう にして川に入り、しぶきをあげて駆けめぐっておりました。 ・・・・・ 枠に収められた想い、収めきれないではみ出した想いが重なって見える。 夕陽がだんだん地平に傾き、鮮やかに雲を画き出す。 (大野一雄「石狩・みちゆき」かりん舎刊) <収めきれないではみだした想いが重なって> 今も、想いの境界(さかい)は重なって、豊かです。 大野先生! *「大野一雄頌ーみちゆき」展ー2月12日(金)まで。 am11時ーpm7時。 *高臣大介ガラス展「冬光(ふゆひかり)」-2月16日(火)-22日(火) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-02-11 13:38
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