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テンポラリー通信

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2010年 01月 22日

寒気来るー有機的な世界(4)

寒気来る。
昨夜水道の水を落として帰ったのだが、
朝蛇口が廻らない。
水が出ない。
ストーブに火を点け、2,30分して水が迸る。
珈琲を飲もうと、ポットに水を入れるが今度はポットのスイッチが
下に下がらない。このスイッチ部分にも水が残り凍っている。
ストーブの前に置くと、やがてスイッチが作動した。
陽射しは燦々と画廊に射し込み、透明である。
会場を点検し、大野一雄のポスターの位置を変える。
「睡蓮」の2葉のポスターを並列し、「天道地道」のポスターを
斜めの壁に置き換える。
「天道地道」公演のポスターは大野一雄と慶人さんの絡みが強烈で、
写真は細江英公、文字は緒形拳である。
これで2階吹き抜け回廊に、腐海の凄まじさが強調される。
寒気と冷気の中、光が白く透き通っている。
たぎる修羅と赤・朱色の生命の色。
玄冬の空気に朱夏の色彩が磁場を生む。
垂直な縦空間に濃い世界が拡がってきた。
凍(しば)れた空気が少し和んでくる。

大野一雄石狩河口公演記録を出版した
かりん舎の高橋さんから電話がくる。
今回の展示にあわせ、記録集に使われた写真等の資料を
展示の為に提供しましょうという。有り難く受ける。
このモノクローム写真は、当日偶然にも会場に居合わせた
写真家横井晶さんによって撮影されたものである。
この写真が存在しなければ、このドキュメントの出版もなかったのだ。
それ程にかりん舎さんは、この本の出版に関して心血を注いでくれた。
この写真の存在は、今は亡き仔羊亭主人詩人の忠海光朔さんの店で、
偶然にも発見されたのである。
石狩河口公演時から11年の歳月を経て、この幻の大野一雄公演が出版
されるのには、こうしたひたむきで真摯な出版人の努力と熱意がある。
大方の資料と原稿は私が公演終了時に集めてはいたのだが、
それだけでは世に問う出版物としては、何かが不足していたのだ。
この横井晶さん撮影の写真資料が見つかるまで、また公演後の東京を
中心とした各界の様々な反響を収録し了解を得るまで、さらに3年の月日
を費やして出版にこぎつけたのである。
多分公演後すぐに私が纏めても、それは単なる事実の記録集にしか
ならなかったと思える。
真に出版という事の大切な良心のようなものの真摯さを、
私は今もこの本の出版から教示されたと思っている。
ムラギシの本もまた然りである。
このふたつの本を出版してくれたかりん舎の坪井圭子さん、高橋淑子さん
のふたりの見識と力量には、ただただ頭が下がるのである。

何ほどかのきっかけを自分が立ち上げたとしても、その後の様々な波及
というものは、人の心の真摯さが芯となって、さらなる大きな波紋を生む
ものである。
この心の有機的な関係性こそが、生きる事の彩(あや)、色ともなる。
今回の森本さんの力作と、遠い過去の石狩河口の大野一雄さんの記録
が、こうして鮮やかにリンクしているのも、そうした精神(こころ)の有機的
関係性の所産と思えるのだ。

凍結した水道管さえ、愛(いとお)しく感じる今朝だ。

*「大野一雄頌ーみちゆき」-1月26日(火)-2月12日(金)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-01-22 12:53 | Comments(0)


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