人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2009年 12月 18日

凍(しばれ)るーthe republic of dreams(15)

キーンと青空。
石油ストーブの上の水が凍っている。
寒気が次第に身体を札幌に戻して来た。
始っている森本めぐみ展に触れぬまま、目黒の坂が続いていた。
年を跨いだ会期。まだまだこれからである。
床板の節穴や、梁の隅にも細かく細工がある。
糸が垂れ、穴を塞ぐ。
吹き抜けを含む会場全体が、水母の触手のように揺れている。
会場左手の壁に、この家全体が宙に浮かんでいる素描がある。
そこだけ赤い屋根が印象的だが、家自体が空中に浮いて、触手の糸が
繊毛のように地下へと伸びている。
これが象徴的だ。
画廊の建物自体が、ヤドカリの棲み家。
あの強い印象を与える大きな目をした少女の瞳の中。
その瞳の中の粘膜やら、目脂やら、涙腺やらが溢れて、この空間全部を
包み込む。そんな気がしているのだ。
2階吹き抜け廊下床板の大きめの節穴には、細長い袋が下まで
ぶら下がっている。
この穴から、胞子の小さな塊を落下させる仕掛けだ。
半透明の袋の中に、その種子のような塊が溜まっていく。
大きな瞳の光彩の中心の、内側の奥の奥にその種子は達して、その時
内側の世界は表に逆転して、ぺろりとひっくり返る。
作家によると、年末にはもう一枚の大きな絵が完成し運び込む予定という。
この作品が展示されてきっとこの空間は、ある完結性を保つに違いない。
種子がきっと産卵するような予感がする。
森本さんのブログに5っの部屋という言葉が出ていた。
恵庭の実家、大学の寮、アトリエ、彼氏の部屋、そして5番目がきっと
個展会場のこの家なのだろうと推測する。
5本の指、5っの部屋。
ここが薬指か、中指かは分からないけれど、5本の指が揃って、あとは
ぐっと掴む、握るだけ。それが5ッ目の部屋の役割である。
年末から年明けにかけて、水母の軟体はきっと貝のように固く孕んで
新しい夢を産むに違いない。
会場全体、否家全体を、柔らかな感性が包む新鮮で有機的世界だ。

*森本めぐみ展「くものお」-12月15日(火)-1月13日(水)
 am11時ーpm7時:12月31日ー1月4日まで正月休。
 
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-12-18 14:00 | Comments(0)


<< 銀世界ーthe republi...      冷え込むーthe republ... >>