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テンポラリー通信

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2009年 01月 09日

沖縄からの電話ーmataーpa(冬の年)(6)

ギヤラリーに着いてすぐ電話が鳴る。チQさんからの電話だった。
昨日無事沖縄に入り、偶然旧知の友人と出会い、そこに厄介になつたという。
これで当面の宿の心配はなくなったと嬉しそうだった。
気候のこと、友人の事、話す事がいっぱいあるようで電話では充分に言葉になら
ない様子である。先ずは第一歩の昂ぶった気持ちが伝わるのだ。
昨日は三笠出身の写真家菅原英二さんが来て、石狩の話をする。
菅原さんとはまだ3度目の出会いだが、私が昔「パルス」という雑誌に書いた「界
川日記ー石狩へ」を何故か記憶していて、そこから親しくなった人である。
かって小学生の頃初めて見た海が石狩の海で、まだ渡船場があり若生で旅館に
泊まったという。「石狩百話」という本にその頃の若生(ワッカオイ)の街図があり
それを見せたら、ここだ、ここだと驚き喜んだのである。産炭都市三笠と石狩・若
生が繋がりそのルートを写真であらためて撮影してみたいと彼は今考えている。
もう喪われた石炭の道を、菅原さんは菅原さんの人生と重ねてもう一度見直す事
を考えている。この個人史の根の触るところに彼の生きてきた時代の血肉がランド
として身体のように顕われるに違いない。それが彼の固有の石狩なのだ。
佐々木さんの網走と、菅原さんの三笠とそれぞれの原風景の再構築が場は異な
ってもその過程がともに新鮮で、話が弾んだ。
閉廊後CAI2展示の富樫幹さんの個展と黒田晃弘さんの似顔絵展を見に行く。
先日ふたりが来て会期がさらに延長になったと聞いたからだ。
会場に着くとIさんが似顔絵のモデルになって描かれていた。
出来上がった作品は桃のように暖かく魅惑的である。彼女の普段見せない本質
が、黒田さんの手で導き出されていた。壁一面に飾られた似顔絵の顔は、どれも
暖かくこんなに人の顔に囲まれていても、少しも威圧感のない寛げる空気がある
。これは、黒田晃弘という人間の人柄によると思われた。
傍に写真家の竹本英樹さんもいて、自然と輪になり話し込む。
圧巻は黒田さんと故村岸宏昭さんの高校生時代の出会いの話で、これで私の知
らない村岸さんの前期の人生が初めてみえたのである。
チQさん、佐々木さん、黒田さんとそのひとつの軸心に死んだ村岸宏昭がいた。
沖縄、網走、黒田さんと2度目の出会い、菅原さんとの3度目の出会い、そしてあ
の世の死者と、魂は越境し、時空をこえて羽ばたいて来る。
あの地下の冥府画廊すら、この仏の集る場として暖かく、時の経つのを忘れさせて
くれる不思議な時間であったのだ。
都市の地底の本来暗黒の地下画廊は、仏たちが集ってその閉鎖空間を超えてい
た。人が場を創る、場というランドを創る。そうあらためて感受している自分がいた。


*佐々木恒雄×チQふたり展「ランド!ホップする時」-1月18日(日)まで。
 am11時ーpm7時月曜定休・休廊
*及川恒平ソロライブ「冬の鏡」-1月12日(月)午後3時~入場料3000円
 予約2500円:ふたり展定休日開催

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-01-09 12:18 | Comments(0)


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