2016年 12月 04日

<振る舞い>祭の否定ー茨(イバラ)・戸(ト)(14)

12月2日道新夕刊に川俣正が一文を載せている。
自らが考え、実行しているアートプロジェクトの
考察だ。
その中で現在日本各地で行われている「芸術祭」
への彼なりの批判の矛先が明瞭だ。

 現在日本の各地で行われている「芸術祭」と言わ
 れている催し物は、多分に観客におもねっているし、
 見る人たちを楽しませようとする振る舞いでしか、
 アートを考えていない気がする。

現在展示中の「TETRAーHOUSE326」展
の経験からしても、円山北町の住宅街の一角が住人
・参加者・観者をすべて巻き込んだ共有体験だった
記憶が甦る。
確かにこの経験は、<振る舞い>や<おもてなし>
ではない。
川俣が創り上げる廃材による家屋の梱包空間には、
人と人のコミュニケーション回路の顕在化のような
回路の物質化の存在感があり、人はその磁場に参加
し、共有し、集ったのだ。
今、生業の消えた集合住宅パックー高層ビルマンシ
ョンが林立する界隈の根元で、その対極に位置する
芸術のインスタレーション行為だった。
33年経た今、川俣正の本質は少しも変わらない。
さらに街の一角からゾーンとしての地域性を深めて
その考え方を、<インターローカル>という考え方
でも提示している。
この<インターローカル>という発想は、九州田川
で10年に渡り継続されたコールマイン田川の座談会
で最初に発せられた。
某著名アートデレクターが、<グローカル>と発語
した時、すかさずそれを否定するかのようにインター
ローカルと切り返したのだ。
グローカルとはグローバルとローカルを繋げた造語で、
それを川俣はグローバルを否定し、インターナショナル
をローカルと繋げたのである。

この<グローバル>を選ばず<インターナショナル>を
選択する川俣の基本精神は、今回の芸術祭ー振る舞い
批判に通底している。
固有の<個人>、固有の地域<地方>との間を繋ぐ回路
を基本に考える姿勢である。
例えて言えば近代化日本の標準語化をグローバル的志向
とすれば、地方方言はローカルだが方言の保つ独特の地
域的感性が全国化する可能性を、標準語の均一性とは真
逆の可能性として<インターローカル>と発想したと思う。
実際にそうした現実は言葉だけではなく進行している。
例えば世界的グローバル産業コカコーラは、販売地域の
水を使用しローカルを実践している。
これは言わばグローカルというものだ。
これに対しインターローカルとは、一地方の独自性を主軸
に世界に通じる価値の創造が主眼となる方向性である。
均一性を前提に地域性を附加して<振る舞う>のではなく、
独自性の共有を目指す、地域から世界へという逆軸なのだ。
文化の本質を考えれば、<インターローカル>とは本来の
文化過程を保っている本質である。
<振る舞う>行為は啓蒙・情宣行為であり、創造行為では
ない。
川俣正は美術家として、創造者の立場を貫き語っている。
コカの実、珈琲の実、紅茶の葉は元々一地方のローカルな
産物である。
カルチャー(耕地)は何時だってローカルを原点とする。
芸術も然り、当然本質は個という一点に発し、展じるのだ。


*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月26日まで。
*森本めぐみ展「百年の予定」12月30日-1月3日まで。
 am11時ーpm5時:月曜定休

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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# by kakiten | 2016-12-04 16:43 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 03日

おでん・話ー茨(イバラ)・戸(ト)(13)

寒いのでコンビニでおでんを買った。
グツグツ湯気を上げる暖かそうなおでんを見ながら、
コンニャクに玉子に竹輪と注文する。
するとレジから眼を離さず注文を聞いていた年配の
店員さん、コンニャク、玉子2個ですね・・と言う。
えっ、<に>が<2>に聞こえたのかと、いや違うよ、
<に>は<と>で<and>だよ、と言うと。<10>
ですか、と言う。
<と>が今度は<10>になってしまった。
経営者の奥さんだろうか初老の婦人である。
結局持ち持ち帰り食べると竹輪が一個多く入っていた。
具材も多く値段もそれぞれ違う。
その注文を聴き、取り出し、レジに打ち込む手間が、他の
客が直接持ち込む商品とは違うから大変とは思う。
でもその後おでんは店員さんを選んで買う事にした。

物を通して会話が深まり、人と人の心が通う。
そんなサロンのような店が減った。
物は物流の金銭交換でしかない。
レジだけを見ていたのは、今時正直なのだ。
ある物を気に入る、必要とする。
そこに人の生活のデイテールがある。
細部に神宿るの例え通り、細部から人は世界と繋がり
世界を創る。
父・祖父の昭和の時代まで、まだそうした町の名残りが残っ
ていた。
物は作り手という人間がいて、それを媒介する店という舞台
があり、客という使い手が物を選んだ。
そこに物を通した回路が生まれ世界を開いた。
人間を基本とする回路が物にはあったのだ。
八百屋から魚屋、肉屋、判子屋から文房具屋。
あらゆる生活全般にその回路が生きていた。
床屋談義という店先でのサロン風景が各業種にもあったのだ。

町が市街地となり、直線主体の風景が生まれる。
物流回路が主役となり、物の流れが直流回路を生む。
都市化が進めば進む程直流直線が風景の輪郭軸に成る。
建物も道路も人の行動パターンも時間も直流・直線化する。
タワービルに新幹線、地下鉄に高速エレべーター、先の尖
った靴に黒いストッキングの飛脚のようなファッション
が街を席巻する。
レジだけを見て、<に>が<2>、<と>が<10>の
数字に聞こえるのは、売り上げという利益直結の直線思考
の結果なのだ。

裏通り、中通り、横道、小道。
蛇行する緩い曲線を喪失して、ショートカットの直線構造が
文化の<耕地>を滅ぼしていく。
おでんの湯気はゆらゆら匂い見えるけど、食べられないと湯気を
否定するな。
湯気と匂いも含めておでんなのだ。


*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月26日まで。
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月30日-1月3日まで。
 am11時ーpm5時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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飛脚のような
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# by kakiten | 2016-12-03 15:01 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 02日

culture(耕地)ー茨(イバラ)・戸(ト)(12)

紐育在住の美術家のRさんが来る。
活字職人酒井博史さん、写真家M夫人も一緒だ。
Rさんとももう長い付き合い。
20年位になるだろうか。

東京のYさんから電話が入る。
深川ー清澄白河MOTサテライトで多忙の中、
テンポラリー吉増剛造展延期の一因となった
お詫びとお礼の電話だった。
石田尚志、鈴木余位氏、吉増さんとも交流の深い
凄腕キューレーターと聞く。
いずれ札幌でお会いするのが楽しみな方である。

この処寒さの所為もあり、内向きの心が少し前を
向く。
外部からの刺激が良い薬だ。
Yさんと少し話で触れたが、深川を清澄白河という
地名で呼ぶ事は知らなかった。
東京にも江戸・深川という地方がある。
日本の首都意識から、自らの地方性を喪失するのは、
なにも東京に限った事ではない。
札幌も道都意識から、札幌という地方を忘却しつつある。
経済・政治面だけでなく、基本の文化面でそうなのだ。
札幌だけが美術館も文学館も道立と頭に命名されている。
文化(culture)の語源は本来、培い耕す耕地
の意である。
人間社会の増幅したインフラ意識が、足元の自然風土を
遊離させ、都市や国家という集団社会構造に吸収されている。
個としても足が車・電車に代わり、眼・耳が電波画面で
代用化する。
百聞も百見も電子機器に癒着して、一見も一聞も<如かず>
の真実を喪失しつつある。
自然と向き合い、培(つちか)い・耕(たがや)した風土
という人間的自然環境を捨て、代換え巨人化した国家・都市
媒体エネルギーに易々と身を任せているのが現代人と思う。
カルチャー(耕地)とは故郷・故里(ふるさと)を生んだ最も
人間的な文化の基底なのだ。
風土も故里も磨り減り、インフラ集中の大都市ばかりが都市帝国
化して聳え立つ。

深川ー清澄白河。
江戸は海と川の街、澄んだ白い水の流れが浮かぶ。
東京都現代美術館一年間の改装休館で、足元の耕地探求とは、
良い機会で楽しみですね・・・と話した。

*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月25日まで
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月30日ー1月3日
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2016-12-02 12:31 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 01日

身際の呟きー茨(イバラ)・戸(ト)(11)

奥歯が欠けて埋める治療が終わる。
通う歯科医は円山北町時代からの長いお付き合いだ。
先生は網走のご出身だ
山田航歌集「水に沈む羊」展で制作した同じ網走の
漁師画家佐々木恒雄さんの絵画を私の依頼で治療台の
正面に置いてもらっている。
先日の月曜日治療終了後先生が笑顔で、ある患者さん
がこの絵を見て、”心が安まります、いい絵ですねえ、”
と言っていたと話してくれた。
先生も毎日見て、如何ですか?と聞くと、勿論と言って
笑っていた。
ふたりの故郷の海が札幌で居場所を得ているなあと感慨
が深かった。
山田航の短歌も一緒に掲示されているし、佐々木恒雄の
名前も表示されている。
眼を瞑り口を大きく開けて治療が終わった時起き上がっ
た目の前に口中の海が広がる。
海と身体が感覚的に同化して感受されるのだ。
今月佐々木さんが来て、ここに立つのが楽しみである。

歯の治療後透析治療に向かう。
この日は2時間半の歯の治療と、5時間の透析である。
治療の合間テンポラリーに寄ると、小包が届いた。
K・Kさんからの差し入れで、靴下や食品がぎっしり梱包
されている。
リュックに詰め病院へ向かう。
ベッドに横たわり折を見て、左手固定し注射針に委ねたまま、
右手を頭の後ろに当て、腹筋をする。
70回数えて、次に両脚を膝から立て左右に倒す捻り、これ
も70回程繰り返し、次に腰を浮かせてブリッジの姿勢を
重ねる。
これを5時間の間2,3回繰り返す。
4、50人いる患者を見回る看護士さん達には、もうお馴染
みで黙認の行為だ。

夜10時過ぎ自宅に着き頂いた食品を暖め胃に収めると、疲れ
がどっと押し寄せて来る。
しかし歯の治療も終え、食欲は至って健在である。
ただ定休日が休みとは言えなくなって、時に一日通院日で潰さ
れるのは、疲れる。
しかしK・Kさんを初め励まし応援して戴いている方々の為に
も出来うる限り応えていかねばならぬ。

茨(イバラ)・戸(ト)口への行程は、公私とも続く。

*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月25日(日)。
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日
 am11時ーpm5時:月曜定休。

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# by kakiten | 2016-12-01 15:38 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 30日

集中力ー茨(イバラ)・戸(ト)(10)

6年間毎冬続いた吉増剛造展、「怪物君」に至る展示。
今年その集大成、東京国立美術館での大個展を控え、札幌は
中止と予告されていたが、ここに来てさらなる飛躍が見え始め
急遽次回展示の申し入れが最近あった。
ネオ怪物君の制作も始まり、札幌での大きな展示も今夏予想
され新たな展開に至ったようである。
2010年「石狩河口/坐ル ふたたび」から展開された
連続展のテンポラリースペースでの新たな展開でもある。
この並外れた集中力に惹き連られたのか、もう一つの恒例の
冬の定番ガラス作家鷹臣大介氏の千本を目指す「野傍の泉池」
展の日程を空けておく配慮がこの間不足していた。
結果的には吉増展は二転三転し1月末からの展示は消えたのだが、
1月末か、2月初めにいつも予定されていた高臣大介展は今年パリ
行きで跳んでしまう事となる。
パリ行きはパリ行きとして祝うべき事だが、10年以上続いている
真冬のガラス展が途切れるのは、彼のライフワークとも絡んで誠に
不本意を覚えるものである。
高臣大介氏には詫びねばならぬ・・・。

それにしてもある種天才の集中力は凄いと思う。
ご指名の共同展示者S氏とMさんも引きづり回された感があり、
S氏は飛行機予約直前で展示期変更通知が間に合った。
Mさんは二度にわたる打ち合わせ訪問予定に合わせ、極上ワイン
を購入しそれがお釈迦になっておかんむり・・・。
その事を伝えたら、3通の未着faxに留守録、そして速達を
含む2通の手紙が届いた。
極上ワインとMさんにも強い執着力をみせるエネルギーに、私は
心撃たれ、唯々感心するばかりだ。
どんな高名な大美術館より、小さなボロ画廊に筋を通す原則力、
そして集中力・執着力・・。
さらにワインと美女に見せた畳み込むような通信量力。
真の天才とはこうしたものか・・と感慨を禁じ得ないのだ。

この力を借りて茨・戸への邁進力を、暫し得た気もする。
個の力、身体エネルギーは偉大である。
身体外ー疑似エネルギーに、この力はない。

*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月22日(日)まで。
 am11時ーpm5時:月曜定休。
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日
 am11時ーpm5時:月曜定休。

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# by kakiten | 2016-11-30 14:48 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 29日

恒なる闘いー茨(イバラ)・戸(ト)(9)

生命を維持する五臓六腑は、身体内部で食物を吸収し分解し体全体
に供給し続けている。
そして身体を取り巻く外部環境は、社会的インフラとして光・水・
熱を網羅・供給する。
その維持管理総体が生きる事の根源にある。
五臓の一つを患い闘病生活を送りながら、腹筋・両脚倒立、足首
回転と寝ながら出来うる事を欠かさない。
しかし社会的インフラの血液ー金銭の欠乏は時として供給遮断の
容赦ない処置もある。
そして身体内部ー外部両域の闘いの上に、意識・思想という第六
の人間にとって欠かせぬ精神上の闘いがある。
身体維持次元の固有な病の闘いと、社会次元の同時代の闘い。
人間はこのフイジカル・メタフイジカルの両面の闘いを人生と呼ぶ。

今東京現代美術館が長期改修工事で休館中、美術館の位置する
深川ー清澄白河ゾーンを主題に町中であちこち展示を企画して
いると聞く。
首都の上から目線で、最近地方創生とか声高なかけ声が聞こえるが、
東京自体江戸という自らの地方を見詰めるべきだと思っていた。
江戸城が皇居となり、江戸が東京となった明治近代。
そこから軍国主義の国粋化が進み、東京は帝都と呼ばれた。
今も東京主体の帝都・首都構造はそんなに変わらない。
首都・東京を起点に、新幹線だ、五輪だ、国際化だと帝都・東京
にすり寄る地方植民地現象が多いのだ。
札幌などはその最たるものと思う。
固有の自然・風土が磨り減って、同じファッションの都市風景が
風俗と化している。
個々の身体が保つ固有の内部環境より、外部環境の総体性にばかり
眼を注いでいるからである。
先ずは自らの身体性に立脚すべきと思う。
自らに合う水・光・熱。
言い換えれば生きている場・風土の水・光・熱の再発見だ。
江戸には江戸の水・光・熱がある。
その風土性・身体性こそが固有の文化・地方である。

東京現代美術館が一年間休館中、自らの足元、深川ー清澄白河を
見詰め街のあちこちに出没し展示してゆく試みは良いと思う。
文化は自耕する、cultureは耕地が本来の意なのだから・・。
そして身体も、個固有の内なる耕地である。

電気(光)水道(水)ガス・灯油(熱)切られても、身体は負けないぞ!

*川俣正TetoraHouse326展ー12月22日(日)まで。
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日(木)ー1月3日(火)
 am11時ーpm5時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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# by kakiten | 2016-11-29 14:13 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 26日

一点突破ー茨(イバラ)・戸(ト)(8)

ぽっんと点のように生きている。
しかし断絶はしていない。
滲みが世界に触れている。

吉増剛造さんから速達封書が届く。
展示会期延期の提案。
来年3月後半以降との事だ。
今回展示の信頼するパートナーの予定が詰まっている
のが最たる理由だ。
早速こちらも1、2月展示恒例のガラス作家高臣大介
さんに電話する。
すると今札幌なので、これからこちらに来るという。
金髪高足下駄の大介氏、1月末からパリへ行くという。

なにかみんな動き出している。
予定は未定、未定は新たな予定となって、今年年末から
明年にかけ、なにか象徴的な「百年の予定」展が始まる。

ぽつんと点が滲むように生きている。
滲んだ回路に触れる世界がある。
茨(パラ)戸(ト)。
一点突破ー広い海へ。
俺の年末・年始ー戸口に触れているー滲み・・。

*川俣正TETRAーHOUSE326展ー12月27日ー1月22日
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日
 am11時ーpm5時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2016-11-26 14:54 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 25日

kuma3clubの集いー茨(イバラ)・戸(ト)(7)

久し振りに山里さんの「北海道の木彫り熊」出版に
合わせ結成されたkuma3clubの集まりに出る。
10年を機に今年一杯で閉店する居酒屋ゆかりに集合。
店主の宇田川洋氏に山里さん所有の木彫り熊を贈呈し
みんなで記念撮影する。
2006年テンポラリースペースが5月、ゆかりは6月
と相次ぐこの地での偶然があった。
自然と展示オープニング後の二次会はゆかりとなって、
多くの想い出を育んだ。
中でも、伊藤邸高層ビル化に反対する「札幌緑の運河
エルムゾーンを守る会」の結成と反対署名運動では、宇田
川さんと、深い絆で行動を共にしたのが忘れられない。
木彫りの熊も美術家山里稔さんが、ひとりこつこつと初期
中期の木彫り熊を蒐集し、一冊の本に纏めかりん舎より出版。
そして本の即売と木彫り熊の展示をテンポラリーで催した。
初日から驚くほどの反響で、開廊前から人が前に並んで、高額
な本が会期中数十冊も売れるという事もあった。
そうして展示と作家の二次会はいつも居酒屋ゆかりで、美味な
お総菜、良いお酒とともに忘れられぬ流れがある。
初めて行った吉増剛造さんは、もう今日はここに泊まるかな~
と冗談を言い、砂沢ビッキの彫刻を撫でながら寛いでいた。
当時高校生だった文月悠光さん、久石ソナ君は入口前で私達は
失礼しますと、心残りを見せながら踵を帰したのも今は懐かしい。

東大名誉教授でもある宇田川氏の心意気と、色んな分野の志ある
人の心とが、名脇役千鶴さんの料理・名酒と合わさって展示や
ライブの後の緊張感を快く解く場であり続け発信地のひとつでも
あったと思う。
フォーク歌手の及川恒平さんや明年三浦綾子文学館の館長にもなる
田中綾さんの寛いだ笑顔の写真も残っている。
10年一昔、濃い10年だった。
病を得てからここ1年居酒屋から遠のいた私だが、久し振りに飲ん
だビールの味は喉に沁みた。
引退の無い私は酒は断ってもライフワークの今の仕事に終わりはない。

*川俣正Tetra-House326展ー11月29日ー12月25日
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日
*吉増剛造展ー1月21日ー2月19日予定。

 テンポラリースーペス札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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# by kakiten | 2016-11-25 13:34 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 24日

寒気廊ー茨・戸(イバラ・ト)(6)

降り積もる雪は少ないが、寒気鋭く身に刺さる。
画廊の水道管が今季初めて凍結している。
2台ある石油ストーブの一台が電源コードが千切れ
役に立たない。
Mさんが中古店で大型のアラジン式石油ストーブを
見つけ持って来てくれた。
野外で工事の人が使うというものだ。
早速これに点火し暫くすると、凍結した水道蛇口から
水が滴りだし回復する。
気持ちが落ち着いて、昨日遅れ夕刻来てくれたN君と
展示を終えた「川俣正テトラハウス326」展を改めて
見渡す。
フイルムネガを拡大コピーし繋ぎ貼り合わせた巻物状
の記録写真だ。
一軒家の内外に廃材を張り巡らす作業の人と状況が活き
活きと展開し浮き上がる。
丸められて癖の付いた端々を虫ピンや画ピンで押さえ、
壁に拡げた。
乾燥し撓み、丸まっている紙の表情が、時の経過を伝える。
しかし古びる感じはしない。
人の熱気が活きている。

何時の間にか都市構造の中で分離され閉じられていく<住む>
という生活行為。
人間にとって最もラデイカルなこの行為の原点に風穴を開け
るように、川俣正のインスタレーション行為が存在した
からである。
<住む>を剥離された都(みやこ)を都心と呼び、<住>は
郊外へと分離・分断される。
そうした郊外住宅地の一軒が内も外も廃材インスタレーションで
再構成された空間。
そこに人が集い小さな村のようになって、あたかも<住めば都>が
復活したかのように、<住>の地軸が復権していたのだ。
<住む・棲む>という行為の内側には、人間の<生活>の原点がある。
<生>は内なる中心に即した<生きる>であり、<活>は外界へと向か
<活きる>で活動・生業と思う。
そこが一本の主軸となって<住む>は<都>という中心軸となるのだ。
川俣正の仮設行為・インスタレーションは、ひと夏その都ー中心軸を
創っていたと思う。

美術・芸術それ自体がひとつの仮設である。
しかしそれは夢・幻ではない。
人間本来が保っている正夢なのだ。
時代・社会が時として、この正夢を分断する。
今の時代で言えば、住むのは都外、仕事は都心と都が分離されるのが
現実である。
そこでは人が住むという価値観より、経済価値という土地価格が
棲み着いて席巻しているからだ。
そこから<住む>が空洞化した<都心化>現象が起きる。
同時に<住む>が<棲む>化した郊外団地・住宅地が構成される。
そうした状況下で川俣の仮設行為は、<都>という中心軸を<住む>
行為の内に脈打たせ、顕したのだ。

茨・戸ーパラトーパラ(広い)ト(沼・古語で海)へ向かおうとする今、
川俣正のプロジェクトを私は多分時代の風穴の原点として見詰めている。
戸口を求めて、茨(イバラ)の戸口へ。

*川俣正Tetra-House326展ー11月29日ー12月25日
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日:月曜定休。
*吉増剛造展ー1月21日ー2月中旬

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# by kakiten | 2016-11-24 16:19 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 22日

氷雨降るー茨・戸(イバラ・ト)(5)

川俣正テトラハウス326プロジェクトドキュメント展の準備をする。
住宅街の一軒家を廃材で梱包した1983年インスタレーション
の記録である。
このプロジェクトは川俣の作家としての出発点の一つともなった。
そしてそれは同時に何の変哲もない日常風景が、一夏風穴を開け、
熱い疾風のような時をもたらした稀有な時間・空間でもあった。
私にとっては暗渠化された見えない川・界川の豪雨による氾濫という
自然現象とこの川俣正の家を梱包した作品過程の経験は、その後の
生き方の基盤ともなった事件である。
今新たにパラトへという石狩への茨・戸への視野が、吉増剛造の
「ネオ怪物君」とともに浮かんでいる時、その原点には界川の氾濫
と川俣のテトラハウスがある。
この原点を札幌の真の意味での入口・出口、茨戸(パラト)で
再構築して見てみたい。
そう思って今川俣正を展示している。

30余年も前の写真図録はもう丸く癖がついて思うように壁に
定着しない。
寒さで手が固まり、難儀する。
頼んだN君は今日の氷雨で来れないようだ。

*川俣正テトラハウス326プロジェクト展ー11月29日ー12月25日
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月29日ー1月3日
 am11時ーpm5時:月曜定休。

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# by kakiten | 2016-11-22 15:54 | Trackback | Comments(0)